
=30日夕、渋谷区 撮影:田中龍作=
冬時、気の早い夜のとばりが下りた午後5時、渋谷区神宮通り公園北側。
炊き出しの配膳が始まる一時間も前から生活困窮者たちが長蛇の列を作っていた。100人はいるだろう。
主催者(しぶや食堂)が利用者にアンケートを取ったところ、野宿者は4割だった。大方の利用者は都営住宅や民間のアパートに住む。

巨大鍋で煮込んでいるのは中華丼だ。=30日夕、渋谷区 撮影:田中龍作=
年金だけでは食べて行けない。働いているが収入が少ない…生活困窮者が大半を占める。
運送会社勤務の正社員(男性・50代前半)の姿が、この日もあった。家族がいる。それ以上は聞くことが憚られた。
就職氷河期世代の彼は政治に対して腹の底から怒っていた。「日本をここまで壊したのは自民党だ」と吐き捨てるように言いながら。
「学生時代の友人は7割がいまだにフリーターだ。結婚もしていない」と明かす。生活が不安定だから結婚なんてしたくてもできないのだ。
彼は「そんな連中に限って選挙に行かない」とも言って憤った。

配膳が始まる。=30日夕、渋谷区 撮影:田中龍作=
40年前ほど前までは父ちゃんが額に汗すれば、一家を食べさせていけた。
ところが今はどうだ。母ちゃんが共稼ぎで働いても満足に食べて行くのは容易ではない。
この日はリンゴ400キロ(軽トラック1台分)が篤志家から届いた。若き日に革命を志向した人物である。炊き出しを取材執筆する田中も、成田空港管制塔占拠事件(1973年)当日は陽動部隊の役割を果たしていた。
働いても働いても食べて行けない。酷い世の中を選挙で変えることができればよいのだが、現状を見る限り絶望的だ。
前出の男性は「どうして革命を起こさないのか?」と繰り返した。だが革命を起こすにはそれなりの勢力を必要とする。

配膳1時間前から長蛇の列ができた。=30日夕、渋谷区 撮影:田中龍作=
革命も起きない。選挙で社会を変えることもできない。
ニッチもサッチも行かない日本は、このまま沈んで行くしかないのか。
貧困大国・日本の年の瀬の風景が炊き出し会場に凝縮されていた。
~終わり~
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