
遠路はるばる足を運ばせる。最大野党は人々の労力と熱意を無駄にしているとしか思えなかった。=29日、イスタンブール郊外 撮影:田中龍作=
地下鉄と渡し船を乗り継ぎ2時間。そして最寄り駅から徒歩30分。やっとこさ会場のマルテペ広場に行きつく。29日、ここで野党が集会を開いた。数十万人が参加したようだ。
こんな遠隔地で100万人、200万人と集めたところで独裁者エルドアン大統領にとっては脅威でも何でもない。
エルドアンが最も恐れているのは2013年のゲジパークをめぐる攻防の再現だ。隣接するタクシム広場とゲジパークが主戦場となった。イスタンブールの中心街である。市街戦にも発展した。
独裁者にとってプレッシャーにもならない集会場所をなぜ選んだのか?
最大野党CHPのオスギュル党首とエルドアン大統領がチンチン(肝胆相照らす仲)である、との見方が消えない。

「母さん。私、賤民になったよ」。=29日、イスタンブール郊外 撮影:田中龍作=
野党集会が開かれたマルテベ広場に向かう道すがらメッセージボードを手にした男女がいた。
「お母さん。私、チャブルジュ(賤民)になったよ」と書かれている。チャブルジュはエルドアンが好んで使う言葉だ。
エルドアンのせいで貧しくなり、反政府デモに参加するようになった、という意味が込められている。

「法律よりも元夫を信用する」。法律なんてDVで別れた夫よりも信用できない。トルコは法治国家でない、という強烈なメッセージだ。=25日夕、イスタンブール市役所前公園 撮影:田中龍作
28日にダウンタウンであったデモでは、若者が会場の公園に行こうとしていたところを一網打尽にされた。
拘束者100人以上。弁護士も3人拘束された。容疑は明らかにされていない。もはや法治国家ではない。
政府の大臣はお飾りである。エルドアンがすべて決めるのだから。
エルドアンが言ったことが法律になる。エルドアンが国家なのである。
~終わり~
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トルコ情勢は重大な局面を迎えました。トルコは地域の大国としてウクライナ情勢や中東情勢に多大な影響を与えます。日本の外交政策にも影響を及ぼすことになります。
破産したら隅田川に身投げするくらいの決意で田中は取材に来ております。御支援何とぞ申し上げるしだいです。