
デモ隊はいつもの20分の1くらいの勢力しかなく、のっけから機動隊に制圧された感があった。=26日夜、イスタンブール市役所前公園 撮影:田中龍作=
「市役所前のデモはきょう(25日)が最後になる」。最大野党CHPのオスギュル・オゼル党首がトンデモなアナウンスをした。
経緯はこうだ。様式美を誇るシェヒザデバシュ・モスクがイスタンブール市役所斜め前にあるのだが、庭内の墓石が壊されているのが見つかった。
「機動隊に追われたデモ隊が壊した」という風評がSNSに上り、狡猾なエルドアン大統領は風評を利用した。「反エルドアン勢力が壊したんだ」と。
墓石が何で壊れたのかも分かっていないのに、CHPのオスギュル・オゼル党首は気を回した。イスラム教徒から敵視されるのではないか、と。いかにも人気のない同党首らしい。
翌26日、田中が目視する限り、CHP呼びかけの集会デモは市役所前で開催されなかった。オゼル党首は主戦場のイスタンブール市役所前を手放してしまったのである。戦略観の欠片もない。

機動隊は敗走したデモ隊をダウンタウンまで追いかけた。=26日夜、イスタンブール市内 撮影:田中龍作=
トンデモなアナウンスがあったため、人々は「デモはなくなった」と受け止めた。日頃であればCHPのデモを切り上げて機動隊と衝突する若者も、きょうはいない。
きょうは断食月のなかでも重要な日にあたるため、デモに参加せず礼拝に出かける。
市役所前の公園に集まった若者は、いつもの10分の1もいない。20分の1くらいか。数万人規模ではないのだ。せいぜい2千人くらいだろうか。
機動隊にしてみれば、プレッシャーでも何でもない。
警察が指揮車の拡声器を通じて通告した。「マスクを外しなさい。ここ(公園)を立ち去りなさい。さもなくば拘束する」。
ガス弾で武装した警察は瞬く間にデモ隊を蹴散らした。
最大野党の党首が不人気で戦略観に欠けるため独裁政権が続く。まるで東アジアのどこかの国と同じではないか。

この日は断食月の重要な日にあたるため市役所が市民に食事をふるまった。同じ公園内のすぐそばで機動隊とデモ隊が対峙していた。いかにも混沌のトルコらしい光景だ。=26日夜、イスタンブール市役所前 撮影:田中龍作=
~終わり~
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トルコ情勢は重大な局面を迎えました。トルコは地域の大国としてウクライナ情勢や中東情勢に多大な影響を与えます。日本の外交政策にも影響を及ぼすことになります。
破産したら隅田川に身投げするくらいの決意で田中は取材に来ております。御支援何とぞ申し上げるしだいです。