世紀の大ウソつきが遂に居直った。政府・東電は16日、爆発、放射能漏れ事故を起こした福島第一原子力発電所の原子炉が「冷温停止状態となった」と発表した。細野豪志・原発事故担当相は「オンサイトの事故は収束した」と高らかに宣言した。
破損した燃料棒がどこにあるのか定かではないのに、なぜ「冷温停止」を宣言できるのか。東電の松本純一・原子力立地本部長代理は「圧力容器から抜け落ちて格納容器の底に留まっているものと見られる」。いつもの木で鼻をくくったような口調で幻想を振り撒いた。
圧力容器の厚さは16センチ、格納容器は3センチ。両者とも鋼鉄製だ。数千度までに熱せられた燃料棒が、ぶ厚い圧力容器を突き破ったのであれば、薄い格納容器も突き破ったと考えるのが妥当だ。
園田康博政務官に上記をぶつけると、政務官は「コンピューターによる解析」と答えた。ひしゃげた燃料棒を視認した訳ではない。要は楽観的推測なのだ。
国内外の多くの専門家は、「燃料棒は格納容器を突き破って原子炉建屋の底から地下にめり込んでいる」と指摘する。いわゆるメルトスルーである。地下で燃料棒がマグマのように煮えたぎっているのだ。
地下にめり込めば地下水脈に流れ込む。地下水脈は海にコンコンと湧き出て、海洋を高濃度の放射性物質で汚染する。農地も同様だ。
収束どころか、これから果てしのない凄まじい放射能汚染が始まるのである。地獄の入り口に差し掛かったと言ってもよい。
【記者クラブからの提案で「合同会見打ち切り」】
「冷温停止宣言」以上に頭が凍りつきそうになる発表が細野大臣の口からあった。「政府と東電の合同記者会見は今回(16日)で最後にする」というのだ。
政府・東電は根拠なき「冷温停止宣言」で事故収束とし、合同記者会見廃止で幕引きを図るつもりである。
「合同記者会見の打ち切りは国民の知る権利を損なうものだ。東電はどんなにウソをつこうが、責任を取らなくてもよい。事実、責任を取っていない。ところが政治家は記者の質問に対して無責任な回答をすると、評判を落とし次の選挙に響く。合同記者会見を続けてもらうわけには行かないだろうか」―筆者はこのような趣旨の質問をした。
細野大臣は「東京電力はこの間、相当に変わった(情報公開するようになった)」という趣旨のことを述べた。多くの政治家に共通するのは東電をひたすら擁護することだ。
細野大臣は「合同本部の記者会見打ち切り」の理由として「マスコミの皆さんから『そろそろ止めてもいいんじゃないか』という意見が出た」と答えた。「マスコミとは誰か?新聞かテレビか、それとも記者クラブか?」と追及されると「メディアの人たちとの信頼関係があるから言えない」。語るに落ちた、とはこのことだ。合同本部記者会見の打ち切りは、記者クラブが提案したのである。フリーランスが「記者会見を止めてもいいんじゃないか」などと提案するはずがないからだ。第一フリーをマスコミとは言うまい。
「合同記者会見の打ち切り発表」には頭がチルドしそうになったが、その後、怒りで体中の血が沸騰する出来事があった。会見開始から1時間15分後のことだった。細野大臣が途中退席すると、西澤俊夫社長までスタスタと会見場を出て行ったのである。
『ふざけるな』という怒りが筆者の胸にこみ上げた。「どうして西澤社長まで退席するんですか?」と声を挙げた。場内は騒然となった。フリーランスが中心になって西澤社長の無責任さを追及したのである。「最高責任者が先に帰るとは何ごとか」と。西澤社長の行動は原発事故に対する東電の姿勢を象徴していた。
細野大臣は「NHKニュース9」に出演するために記者会見を途中退席したことがわかった。フリージャーナリストの上杉隆氏によれば、テレビ出演のために記者会見を途中退席するのは「公務軽視」で問責の対象となる。
いい加減な政府が無責任な東電をかばい、新聞・テレビは東電を追及しない。17日の朝刊各紙には「冷温停止」の見出しがデカデカと踊るだろう。住民を「強制帰還」させる大義名分は整った。