「こちらは東京電力です。写真撮影は禁止されています」。公共用地である海岸から原子力発電所にカメラを向けるとスピーカーから警告のアナウンスが発せられた。相変わらずの秘密主義である。
原子力規制委員会から運転禁止命令を解除されて再稼働のお墨付きを得た東電・柏崎刈羽原発。
13年前、福島で原子力史上最悪の過酷事故を起こした東京電力が、今度は世界最大の発電量を誇る原子力発電所を再稼働させようというのだ。
今回、北陸地方を襲った大地震で新潟市内では液状化現象が確認された。柏崎市内も液状化現象が見られた。
柏崎刈羽原発の構内で液状化現象が起きても一向におかしくない。「液状化現象は原子力施設周辺では起きていないが、事務棟周辺で起きた」との情報もある。
東京電力が構内に報道機関を入れるなどして情報を公開しようとした形跡は見られない。隠ぺいに次ぐ隠ぺいの結果、過酷事故を引き起こした福島の教訓は頭の隅にもないのだろうか。
福島の過酷事故は、事故は起きることを前提にしなければならないということを教えてくれた。柏崎刈羽原発を抱える新潟県の泉田知事(当時)は避難経路の確立を訴えてきた。
避難経路を東電の社員だった蓮池透氏と共にチェックした。原発5キロ圏内は即避難だが、自家用車を運転できない住民は集会所でバスなどを待つ。
だが放射線量が1mSvを超えた場合、県はバス会社に出動を要請しない…ことが協定により取り決められている。集会所の住民は見捨てられるのだ。
仮に逃避できたとしても、避難先に到着するまで、絶望的なまでの避難時間を要することが県のシミュレーションで明らかになっている。道路網が不備なうえ車が一気に押し寄せるからだ。
5㎞圏内で通常でも10時間10分、地震の際は24時間10分、積雪時は35時間10分。
30㎞圏内で妙高・糸魚川方面に避難した場合、通常でも95時間50分、地震の際は157時間30分などとなっている。
幹線道路の国道8号線は渋滞する。渋滞緩和のためのバイパスは計画から30年経つが未だ建設作業中だ。
柏崎刈羽原発が運転を停止して12年が経つ。ベテランの運転技師は定年で減っていく一方だ。エンジニアだった蓮池透氏によれば、3割が実機を運転した経験がない。
「機械にしろ自動車にしろ長年休ませた後でまた動かす時はトラブルが起きることがママある」と蓮池氏は指摘する。
東京電力と経団連は再稼働に前のめりだが、危なくて仕方がない。
~終わり~
◇
パレスチナ取材の大借金を抱えたまま能登半島と新潟の柏崎にまで足を延ばしました。人命第一と考えたからです。
吊れる首は一つしかありません。御支援なにとぞ御願い申し上げます。