「汚染水」と呼べない福島県民の苦衷

横断幕には「汚染水」ではなく「処理水」の文字が。我が目を疑った。=31日、首相官邸前 撮影:田中龍作=

 31日、首相官邸前。岸田政権と東電による原発の事故処理汚染水の海洋放出に反対する集会が開かれていた。

 横断幕の文言にギョッとした。3枚の横断幕はいずれも「処理水」の海洋放出に反対と書かれているのだ。経産省や東電が小躍りして喜ぶだろう。

 デモや集会で見かけるのはたいがい「汚染水」なのに。

 横断幕を持つ福島の男性に「なぜ処理水なのか?」と尋ねた。

 男性は「汚染水と書くと漁民と団結できないんですよ」と渋い表情で答えた。

 汚染水と書くと風評被害を拡大させる懸念があるのだ。

 福島から参加している女性は「汚染水って言うと嫌がる漁民がいますからね。(一方で)あれは汚染水だって言う人もいる。難しいですよ」と説明してくれた。

中国のTV局記者が「福島の魚を食べますか?」と質問すると男性は「怖いので食べません」と答えた。=31日、首相官邸前 撮影:田中龍作=

 「漁民の納得が得られるまで処理水(汚染水)の海洋放出をしない」。約束を反故にした岸田政権が、国際社会の納得を得られるはずがなかった。

 新聞テレビを使って従順な日本国民を押さえ込むことはできても、近隣国は抗議という形で反応した。

 猛毒トリチウムはじめ濾過されても残る核種が海に放出される。

 小出裕章氏は「デブリの取り出しは100年たっても不可能」と断言する(AERA dot.より)。

 デブリが100年以上にわたって取り出せなければ、その間、猛毒ストロンチウムは海洋に出続ける。魚介類の生体濃縮が100年以上続くのである。怖いのはこの生体濃縮である。

 海水のサンプリング調査で「問題ない」などというのは、子供ダマシだ。猛毒ストロンチウムをはじめとする核種が生体濃縮された魚介類を食べる時こそ怖いのである。

 日本の新聞テレビを総動員してウソで固めた安全性を刷り込んでも、国際社会には通用しない。 

 東電と官邸のやり口に隣国が呆れ憤るのも無理はない。

両方をとって「処理汚染水」。並々ならぬ気遣いが窺えた。=31日、首相官邸前 撮影:田中龍作=

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