
秘境に重機は似合わない。鉄板の下を善福寺川が流れる。川の護岸工事。いま問題となっているトンネル工事ではない。=9日、杉並区・善福寺川緑地 撮影:田中龍作=
ここは本当に東京23区か。見上げてもてっぺんが確認できない巨木古木に覆われ、野鳥のさえずりが絶えず聞こえる。善福寺川緑地公園(杉並区)は秘境である。
カメラを手に大鷹ウォッチにいそしむ人々の姿もあった。田中が訪れた時、大鷹は巣作りに励んでいた。
川に目をやれば、水鳥たちが清流をかく音が清らかに響いていた。

大鷹ウォッチのカメラマンと『希少動物保護のため…』の標識。=9日、善福寺川緑地 撮影:田中龍作=
だが、秘境・善福寺川緑地を建設業者が放っておくはずがなかった。業者と役人だけが潤う公共工事が自然を破壊することになりそうだ。
東京都は治水対策と称して善福寺川緑地から関根文化公園の5.8キロを巨大な地下トンネルで結ぶ計画だ。水量調節池である。
総事業費1557億円。工事は2041年度まで続く。
懸念されるのはトンネルを作るのに悪名高きシールド工法で掘り進むことだ。
シールド工法は地下40数メートルの大深度地下を直径16メートルの巨大なカッターで掘り進む。自然界に存在しない超巨大モグラが通ることで、地層はグチャグチャに破壊されるのである。環境破壊モンスターである。
2021年、調布市の住宅地で起きた陥没事故は、シールド工法が原因だった。工事を発注したNEXCO東日本(東日本高速道路)も認めている。
地下水脈をズタズタにされ地下水の流れが変われば、善福寺川緑地の樹木に悪影響が出ないはずがない。

シールド工法が原因で起きた道路陥没事故。空洞ができ地層がズレたことでガスが漏れ出した。=2021年、調布市東つつじケ丘 撮影:地元住民=
取水口建設のために立ち退きを迫られる住民も出て来る。
本数は明らかになっていないが、古木巨木も伐採される。保水効果のある樹木を伐ることは、治水対策として矛盾していないか。
治水工事であるとしても、シールド工法を用いなくて済む工事方法があるはずだ。
果たして1557億円もの巨費を投じる必要があるのか。
東京都議会議員出身の五十嵐えり衆院議員(当時)は、『善福寺川上流地下調節池整備事業の費用便益比に関する質問主意書』(2025年12月)を政府に提出した。
事業効果に疑問を投げかける内容となっている。
「費用便益比(費用対効果)が低く、排除するか、改善すべき必要があるのに、改善努力が行われていない。公金の不要な支出が行われる恐れがある」。
~終わり~
◇
田中龍作ジャーナルは読者のお力により運営されています。

















