
イスラエル国境警察の襲来が予想された日、人々はアラーの神の御加護を祈った。奥の白い建物が壊された集合住宅。=2023年2月、東エルサレム 撮影:田中龍作=
狂気としかいいようのない破壊と追放が今、パレスチナのヨルダン川西岸で進んでいる。
「アラブ人に死を」と叫ぶイスラエルのベングビール国家安全保障相が「エスニック・クレンジングを掛ける」と意気込む四ヵ所のうちの一つ、東エルサレムのシルワン。
東エルサレムはイスラエルにとっても聖地なだけにベングビールの力の入れようは尋常ではない。
パレスチナ住民の間でもここは取り壊されると言われていたシルワンの集合住宅(写真)を田中は取材していた。23年2月のことだ。10~13家族、約100人が暮らす。
住民たちは交代で焚火を絶やさぬようにして深夜早朝も警戒を続けていた。

襲って来たイスラエル国境警察はパレスチナ国旗をもぎ取った。=2023年2月、東エルサレム 撮影:田中龍作=
イスラエル国境警察が襲ってきたこともあった。パレスチナ国旗が屋外に掲揚されているという理由からだった。
ベングビールが国家安全保障相の名において、パレスチナ国旗の屋外掲揚を禁止したのだ。法律でも条例でもない。
シルワンの集合住宅は昨日23日、イスラエル国境警察が取り巻くなか、重機が入り、無残に取り壊された。パレスチナ住民100人の生活の場は灰塵に帰したのである。
パレスチナ住民たちは抵抗したが、大型バスで駆け付けたユダヤ人入植者たちによって袋叩きにされた。
シルワンに限らず西岸のあちこちで住宅破壊とパレスチナ住民の追放が急ピッチで進む。一日に複数の個所で、イスラエル軍や国境警察が取り巻くなか、重機が入って住宅や街を破壊している。

住民は焚火で暖を取りながら警戒を続けたが。=2023年2月、東エルサレム 撮影:田中龍作=
今年1月にはジェニン、トゥルカレムなど4カ所の難民キャンプがイスラエル軍によって破壊され、約4万人が住居を失っている(BBC調べ)。
難民キャンプはパレスチナ住民が戻って来られないようにズタズタに破壊されていた。パレスチナの民は2度にわたって難民となったのである。
寒空の下、膨大な数の人々はどこに身を寄せているのだろうか。
~終わり~
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