「●●人を殺せ」「●●人は出てゆけ」…マイノリティーへのヘイトスピーチが吹き荒れる新宿・大久保の様相が一変した。差別撤廃を求める市民たちがきょうデモ行進した。
「東京大行進」と名付けられたパレードは、レイシストによるヘイトスピーチの際、カウンターに立つグループで作った「People’s Front of Anti Racism」が主催した。
「東京大行進」の名は、50年前、黒人差別の撤廃を求めて20万人が参加したワシントン大行進にちなんだ。
秋日和のなか1,000人余りが出発点の新宿中央公園に集まった。在日コリアンが多く暮らす大阪から駆け付けた人たちの姿も見られた。
チマチョゴリ姿の駒井真由美さん(大阪市住之江区・39歳)は、母親が在日コリアン2世だ。駒井さんは、母親への反抗心からレイシスト側のデモに加わっていたが、違和感を覚えるようになり、3月頃からカウンターに立ち始めた。
母親が脳卒中で倒れたことが転機だった。「母には償えるものなら一生かけて償いたい」。唇を噛みしめながら話す駒井さんは、ヘイトデモに加わったことを心底後悔していた。
日本は国連の「人種差別撤廃条約」に加盟(1995年)しているが、国内法はまったく整備されていない。民族差別に根ざしたヘイトスピーチは野放しの状態だ。レイシストの頭目が6月に逮捕されたが、容疑は暴行だった。
「表現の自由はあるが差別する自由はない」。大行進に参加した男性(大学教授・50代)は話す。
「差別をやめよう」「一緒に生きよう」…参加者たちのシュプレヒコールに街の人たちの表情もなごんだ。
「排外デモのひどさに泣いてしまった。同じ道をきょうは笑顔で歩きたい」。李信恵さん(30代女性・大阪)が出発前に語っていた希望は実現した。