
「また撃たれた」。救出に駆けだす救急隊員たち。=2018年、パレスチナ自治区アルビーレ村 撮影:田中龍作=
殺傷力のある武器が海外に輸出される。これで憲法改正すれば、日本は平和国家ではなくなる。戦後80年の禁を破って堂々「戦争をする国」となるのだ。
悔やんでも悔やみ切れない悲しい出来事がパレスチナの地であった…

彼らは物心ついた時から戦場の中で暮らす。=2022年12月、イスラエル国境検問所付近 撮影:田中龍作=
イスラエル軍が雨あられのごとく催涙弾を浴びせ、毒ガスであたりは白く煙って視界ゼロとなる。「パン、パン」…乾いた音と共に実弾も放たれる。
バタバタと倒れる同胞たち。サイレンを鳴らして走り回る救急車。パレスチナは世界一、救急隊が忙しい地域だ。
現場で見る限り救急隊の半分は女性である。スカーフを被っていたり、被っていなかったりする。
イスラエル軍が丘の上まで下がり、前線が緩んだ時だった。若い女性隊員が田中に話しかけてきた。年の頃はまだ二十歳に手が届いていないのではないだろうか。
「どこから来たのですか?」
「日本です」。
会話の始まりはお定まりのパターンだった。

この日も救急隊員たちはオリーブの木陰から心配そうに戦況を見つめていた。=2018年、パレスチナ自治区アルビーレ村 撮影:田中龍作=
彼女は「日本」と聞くと、アーモンドのような目をさらに大きくさせた。キラキラと輝いているのが手に取るように分かる。
「日本は世界の中でも別の国。第2次世界大戦の後、戦争を止めて経済繁栄を遂げた。日本はピースフルカントリー。一度日本に行きたい。それが私の夢です」。彼女はそこまで一気に話すと「私たちの国と全く違う」と言って目線を落とした。
田中は逡巡した。本当のことを話せば彼女の夢を壊す。しかし、もし彼女がお金を貯めて日本に来て、現実を知ったら、どうなるだろう? 立ち直れないほど落胆するだろう。
思い切って実情を明かすことにした。「それが違うんだ。プライムミニスターが愚かで、平和な国から戦争ができる国に変えてしまったんだ」「きのう飛んだドローンはイスラエルと日本が共同開発してるんだ」。
彼女は見る見る顔を曇らせた。唇に人差し指をあてたまま押し黙ってしまった。
世界には豊かで平和な国がある(2018年)。そうなれば血を流さずにすむ・・・戦争の最前線にいる彼女はそう信じて生きてきたに違いない。なのに日本の愚かなジャーナリストは、彼女の希望をぶち壊したのである。その夜、田中は泣き明かした。
この時ほどアベシンゾウの安保法制を憎んだことはなかった。いま高市早苗である。
※
本稿は2018年の取材です。
~終わり~
◇
無辜のパレスチナ住民がイスラエル軍に迫害されているのを見ると、田中は突き上げるような怒りを覚えます。
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