
エジプトの民衆は自由のためなら戦車にひき殺されることも厭わなかった。=2011年、エジプト・タハリール広場 撮影:田中龍作=
2011年2月、カイロのタハリール広場(日比谷公園に相当)をエジプトの民衆が埋め尽くしていた。少なく見積もっても5万人は下るまい。
30年以上続くムバラク独裁政権を倒すまで、人々は座り込みを解かない構えだ。戦車が広場の中に配置されていた。ムバラク大統領は軍出身である。
ある朝、戦車のエンジンがかかった。緊張が走る。戦車が民主派学生をノシイカのように轢き殺した天安門事件を思い起こす余裕もなかった。
数日前には治安部隊がデモの市民を射殺する事件もあった。
ところが戦車の周囲を固めていた人々は微動だにしなかった。逆だった。ある男性(30代・建築業)はキャタピラーの下に頭を突っ込んだ。
田中「怖くないか?」
男性「怖くない。自由と民主主義を守るためだったら怖くない」。
しばらくすると軍は戦車のエンジンを止めた。人々が包囲を解いていたら、タハリール広場占拠は終わっていただろう。
田中はピープルズパワーが勝利する瞬間まで伝え続けた。終盤、カメラのレンズが軋(きし)むようになっていた。
帰国後、ニコンショップに行き修理に出した。検査の結果「小さい砂が入っていた」と。エジプトの砂だった。

チェーンソーは森の空気をつんざくような高音をあげながら、次々と樹木を伐採していった。=24日、沖縄高江ヘリパッド建設現場 撮影:田中龍作=
沖縄高江。天然記念物のノグチゲラがさえずる原生林を切り拓いて、米軍のヘリパッドを建設する工事が始まった。2016年夏のことだ。
国が米軍基地建設のため提供した区域に無断で入ることは法律違反となる。刑特法違反だ。
法律を犯せば会社に家宅捜索が入る。沖縄2紙といえどもヘリパッド建設工事現場に入らなかった。
防衛局のやりたい放題を田中龍作のカメラは記録した。
原生林(ジャングル)の湿気は凄まじかった。カメラが内部から曇った。冷蔵庫に入れたりしたが、復旧しなかった。
マスコミが伝えない現代史を田中龍作のカメラは記録してきました。愛機の酷使は耐えがたいものでした。
とはいえカメラとレンズがなければ仕事になりません。新品購入の止むなきに至ったしだいです。大赤字となりました。
~終わり~
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田中龍作ジャーナルは、読者に世界の現実を伝えるため、現場主義を貫いております。

















