パワハラ疑惑などで失職した斎藤元彦前知事を再選させた兵庫県民を揶揄する言説でネット空間は一杯だ。
斎藤候補、立花候補の街宣現場にいた聴衆は異口同音に言った。「疑惑はなかった。マスコミがウソを報道していた」と。
斎藤陣営は斎藤氏本人に掛けられていた公益通報者保護法違反の疑いを、不倫問題とすり替え、人々をコロっと騙したのである。
兵庫県職員へのアンケートで「パワハラを実際に目撃した」との回答は140件、「実際に目撃した人から聞いた」は800件、「人伝てに聞いた」は1911件。合わせると2851件にものぼる。(時事通信より)
田中はボランティアスタッフ(女性)に「県職員はパワハラがあったと証言してますよねえ?」と聞いたが、彼女は「斎藤さんは改革派だったから職員の反発を買ってたんですよ」と答えるのだった。
彼女が「調べれば調べるほど疑惑がウソだと分かった」と話すので、田中が「情報源は何ですか?」と聞くと、彼女は「ネットです」と答えるのだった。
それはウクライナ戦争に対する認識と同じであることが分かり、愕然とした。
田中をはじめ世界各国のジャーナリストが現場で見聞きした事実よりも、多くの日本人はネットの言説を信じた。中にはネットメディアの媒体名まであげて「●●●を読んですべて分かった」と得心する人もいた。
●●●の社員から直接聞いた話だが、「ネット上の陰謀論サイトから面白そうな記事を見つけてきて翻訳ソフトに掛けて記事にしているだけ」なのだそうだ。
ウクライナ戦争は2014年3月から始まっていて、田中はその時から現地取材をしてきた。今次(2022年2月開戦)の戦争でも開戦前から現地取材を続けてきた。
ウクライナで現場を取材した世界各国のジャーナリストの記事や写真は、兵庫県職員のアンケート証言と同じである。
例えば、ロシア軍による虐殺はあったとする事実は、その一点において同じでも、ジャーナリストが100人いたら100通りの具体的で自然な描写があった。田中はブチャに幾度も幾度も足を運び、住民や神父の証言を記録した。話は生々しく、しかも整合性があった。
ところがネットメディアが放つウクライナ軍の自作自演説は、大筋においてわずか数通りの話しかなく、しかも不自然だった。そりゃそうだ。陰謀論サイトがネタ元なのだから。
ナイーブな日本人は陰謀論を信じ込みやすい。一朝事あった場合、内乱を起こすのは簡単だ。
~終わり~
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レバノン取材の大借金を抱えたまま、無謀にも兵庫県知事選挙に来ました。
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