
「イチ・ニイ・サンセイトウ」…聴衆が3本指を突き出すさまは、さながら「ハイル・カミヤ」だった。=19日、芝公園 撮影:田中龍作=
写真はありのままを伝える。7月19日は何とも不気味な夜だった。
今回の参院選挙で突風を起こした参政党の神谷宗幣代表がマイクを握って声を張り上げた。
「外国人問題、まさにグローバリズムの仕組みに対して(我々はモノを)言っている。
どんどん外国資本や外国人労働力で補おうと言うから、それはダメだと言っている。
もっと日本人はやれることもあるし、財産もあるし、結婚して子供を作りそれをしていく人が国会議員の仕事じゃないんですか?」
神谷は「戦後80年をひっくり返す」と演説を締めた。

ネオンに輝く東京タワーがあって日章旗があって。。。カルトチックな光景だった。=19日、芝公園 撮影:田中龍作=
田中が神谷参政党を集中して追いかけたのは、今の日本がナチス抬頭前夜のドイツとよく似ているからだ。
当時ドイツは失業者が600万人もいて住む所にも不自由していた。ヒトラーは、「あなたたちが貧しいのはユダヤ人のせいだ」と煽り、自らへの求心力とした。
神谷は特定の人種名こそ出さないが、外国人労働者に仕事を奪われて、しかも日本人の賃金も安く抑えられている、と主張する。
《日本人が貧しいのは外国人のせいだ》と言わんばかりだ。
ナチス党員は「ひどい経済状況に絶望していた私たちにヒトラーが語るドイツは素晴らしいものに思えた」と述懐している。
参政党も「国民負担率を35%まで下げれば皆さん達の生活は豊かになる」と数字を挙げながら夢をばら撒く。

アップで、引きで、そして前から後ろから複数のカメラが神谷の演説を伝えた。演出に凝ったナチスと同じだ。=19日、芝公園 撮影:田中龍作=
お隣りの中国と韓国に経済で追い抜かれ、不動産は中国人に買い占められる。貧しい日本人にブランド品は手が出せない。
自信を失った人々に「日本人ファースト」は刺さった。
ヒトラーがドイツ国民一人ひとりに民族の誇りを訴えたのと同じだ。
神谷はヒトラーほどのタマではないが、時代状況があまりに似ている。何より日本人は簡単にネットの情報に扇動される。兵庫県知事選挙、そして今回の参院選が格好の例だ。
独裁者を、暗黒のファシズムを、作り出すのは情弱な国民である。肝に銘じたい。《文中敬称略》
~終わり~
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【読者の皆様】
参政党の危険性を見届けるために田中は京都、大阪まで足を延ばしました。ファシズムは気づいた時にはもう手遅れです。