世界には武力行使という必要悪がある

クリミア半島に電撃侵攻したロシア軍。=2014年 撮影:田中龍作=

観念的ハト派の政治家たちが決まり文句として使うマジックワード「外交」。一見、良識的でカッコいいが、恐ろしく現実認識を欠く。

一例を挙げよう。

2014年3月、ロシア軍はウクライナ領クリミア半島に電撃侵攻した。

プーチンの傀儡ヤヌコビッチ大統領が政権の座を追われた報復であるが、これはクーデターではない。ヤヌコビッチ政権の治安部隊は最後までデモ隊を射殺していたのだ。

ヨーロッパの庭先で帝国主義の時代に戻ったかのような蛮行を繰りひろげているロシアに対してNATOは動かなかった。

旧東側軍事筋は田中の電話取材に「プーチンはオバマの足元を見ている。オバマが(軍事力行使に)出てこないことを知っているから」と話した。

アサドは反体制勢力の拠点に化学兵器を投下し、証拠を消すために爆撃を加えた。=5月15日、シリア 撮影:田中龍作=

経緯はこうだ―

国連がアサドの化学兵器を調査するためシリアのダマスカスを訪れていたのだが、アサドが反体制勢力に対して化学兵器を使用してしまった。2013年。

オバマは前年、「化学兵器の使用があったら重大な結果を招く」と豪語していたが、手を拱いているだけだった。

プーチンはそれを見逃さなかった。プーチンは「化学兵器を国連の管理下に置くよう」アサドを説得したのである。アサドもプーチンの説得があったことを認めている。

オバマが武力行使に踏み切っていたら、ロシア軍のクリミア侵攻もドンバス侵攻もなかった可能性が高い。ウクライナ本土への侵攻(2022年2月)もなかっただろう。 

世界はこれほどまでの泥沼にはまらなかったのである。

空爆を掛けセルビア警察と軍を撤退させたクリントンはコソボの英雄となっている。=2023年、プリシュティナ 撮影:田中龍作=

オバマの逆がクリントンである。コソボだ。人口の1割にも満たないセルビア人が人口の8割を占めるアルバニア系住民を虐殺していた。

エスニック・クレンジングである。コソボ住民は「街かどでアルバニア語を話したりするとその場で撃ち殺されていた」と田中に語ってくれた。

人道外交を掲げていたクリントンは、セルビアを空爆し虐殺を止めさせた。1999年。

生きるためには戦わねばならない。戦うためには手を汚さねばならない。戦争は悪である(中略)。

(しかし)剣を執らない者は悪臭を放つ病気によって滅びる。―『カタロニア讃歌』ジョージ・オーウェル― 

~終わり~

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