コソボの首都プリシュティナから車で北に1時間も走ると景色が一変する。次の瞬間から頭が混乱する。バルカン半島にロシアの飛び地があったのだろうか、と。
赤・青・白の3色国旗が空を埋め尽くさんばかりに翻る。セルビア国旗らしいのだが、ロシア連邦国旗とウリ二つである。
さらに驚いたのは倉庫の壁にZマークがスプレーでしっかりと描かれていた。ロシア軍の車両に記されている、あの「Zマーク」である。
ロシア軍が占領した地域の建物に、犬がオシッコをかけたように書き残されている、あの「Zマーク」である。
場所はセルビアとコソボとを結ぶ幹線道路沿いだ。
親露派の御仁たちが「Zマークを書いたのはウクライナ軍だ。自作自演だ。」などと言い出さないか、と気になった。
コソボ北部のセルビア国境沿いは人口(約5万人)のほとんどをセルビア人が占める。コソボの警察権力は及ぶが、事実上のセルビア人支配地域である。
親露住民の事実上の支配地域に、遠く離れたウクライナから軍隊が来られるはずもないし、来たとしても、Zマークの落書きなんぞできない。
ソ連の時代から旧ユーゴスラビア(現セルビア)はロシアと浅からぬ関係にある。ワグネル社がセルビアで傭兵を募集していたことも明らかになっている。
セルビアがコソボ戦争(1998~99年)で、コソボを失ったのは、NATOのセルビア空爆だった。それに反対していたのがロシアだった。
ソ連崩壊直後のロシアにはNATOに逆らえる経済力などなかった。
今よみがえるセルビアとロシアの怨念、と云ったら言い過ぎだろうか。
~つづく~