誤爆の真相は藪の中

米軍の空爆で破壊された旧王宮。=2007年、カブール郊外 撮影:田中龍作=

 8月、アフガニスタンから撤退中の米軍がカブールで実行した空爆は誤爆だった — 米中央軍が謝罪した。空爆はドローンによるもので、民間人10人が犠牲となった。

 前回のカブール陥落(2001年末)から間もない頃にも誤爆があった。結婚式を祝っているところを、米軍が空爆したのである。

 花嫁、花婿、村人が犠牲となった。米軍側は「祝砲の音を高射砲の発射音と間違えた」とまことしやかな言い訳をしていたが。

 コソボ戦争(1998~99年)の際、米軍がベオグラードの中国大使館を“誤爆”した。「米中戦争」の引き金になりかねない事件だった。

 結論から言って、誤爆ではなかったようだ。

 経緯はこうだ ― コソボで米軍の誇るステルス戦闘機がユーゴ(セルビア)軍の高射砲で撃ち落とされた。ユーゴの精強な高射砲部隊は、チトー時代からの伝統である。

 撃ち落とされたステルス戦闘機の残骸は、中国大使館に運び込まれたようだ。

 高射砲攻撃に捕まったのでは、何のためのステルスなのか分からない。面目丸つぶれだ。何より、米軍としては機体を解析されたくない。

 誤爆は都合のいい理由となった。

クリントン米大統領(当時)は空爆を掛けてセルビア軍を追い出した。コソボの英雄である。壁画はその後、立像となった。=2003年、プリシュティナ 撮影:田中龍作=

 戦地では武装勢力が病院や学校に立て籠もる。攻撃しにくいからだ。それでも米軍は空爆する。

 誤爆なのか、正確な情報に基づく爆撃なのか。真相は分からない。分かっても機微に触れ過ぎて書けなかったりする。

 2015年、アフガニスタンで国境なき医師団の診療所が誤爆され、医師や患者が命を落とした。オフレコを条件に医師から爆撃された理由を聞いた。田中は呆然となった。

 当然記事にはできなかった。誤爆の真相は表に出にくい。藪の中だ。

      ~終わり~

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