
開いた扉が連なる光景は独裁政権の崩壊につきものだ。=18日、サイドナヤ刑務所 撮影:田中龍作=
人々を恐怖に陥れた施設は、首都ダマスカス郊外の丘の上にあった。サイドナヤ刑務所―
ロシアに逃れたバッシャール・アサド大統領の父親ハーフェズ・アサドの時代に作られた。
田中は18日、新政府軍兵士の案内で同刑務所を取材した。
半世紀にわたる独裁政権が倒れたことを象徴する光景がここにもあった。刑務所が解放され収容部屋の扉が次々と開けられていった。
アサドを批判した かど で18歳の時に逮捕された男性は41年間、収容されていた。脱出した時は60の声を聞く歳となっていた。

人間オーブン。18日、サイドナヤ刑務所 撮影:田中龍作=
8畳ほどの部屋に100人が閉じ込められていた。トイレは2つだけ。
アサド政権下でいったい何万人の市民が拷問の末、殺されていったのだろうか。
木工所で使うような回転ノコギリがあった。「受刑者を生きたまま切断した」と兵士は説明した。高さ2メートル余りのタンクは化学兵器で受刑者を殺す際に用いた。

ひと部屋に100人が詰め込まれていた。受刑者たちは重なっても横になるのは難しかったはずだ。18日、サイドナヤ刑務所 撮影:田中龍作=
地下には「人間オーブン」があった。バッシャール・アサド大統領が、作らせた。アラブの春(2011年)はシリアでも吹き荒れ、反政府デモ参加者が大量に逮捕された。
「人間オーブン」は処刑したデモ参加者の遺体を焼却するのに使った。
2022年、ウクライナ東部のマリウポリを壊滅させたロシア軍が、遺体焼却装置を使っていると言われたが、このような「人間オーブン」だったのだろうか。ウクライナ取材を続けていた頃、写真を見た記憶がある。
独裁体制は一度敷かれてしまったら、抜け出すまでには身の毛もよだつような地獄を経験する。
~終わり~
【読者の皆様】
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