緑のシッペ返しが襲ってくる

台風一過の善福寺川緑地。川が氾濫することはなかった。=4日、杉並区 撮影:田中龍作=

ベトナム戦争終結後、アジア最長の内戦となっていたアチェ内戦の取材でインドネシアに逗留していたことがある。

赤道直下なのに日本の夏よりも涼しいのだ。一日じゅう外を歩いていても熱中症になることはなかった。

ジャカルタなどごく限られた大都会を除けば、道路傍の街路樹が緑豊かだ。大木が飲食店の店舗だったりする。

ヨーロッパの諸都市でも街路樹の下でカフェやレストランが営業する。夏でも涼しい。

作業員がチェーンソーを入れると樹齢50年以上はある銀杏の木は数十秒で切断された。=2025年2月、神田警察通り 撮影:田中龍作=

日本の都市行政はまず樹木を伐る。街路樹があれば、天然の日傘となって直射日光を浴びることなく駅まで歩ける。なのに、わざわざ剪定する。

伐られた後の街路樹のぶざまな格好は、都市景観さえ損なう。良いことはない。

住民の多くは木を大事にしようとしない。「庭先に枯れ葉が落ちてくるから何とかしてくれ」と苦情を役所に寄せる。予算を消化したい役所にとっては渡りに舟だ。かくて身近な街路樹も無残に剪定される。

調節池建設工事が本格化すれば、母と子の緑は奪われる。=4日、善福寺川緑地 撮影:田中龍作=

緑は巨大利権と結びつく。山林や水田は宅地開発される。大地は保水力を失う。河川は氾濫する。地球温暖化によるゲリラ豪雨もあるが。

緑を粗末にしてきた結果、日本人は今、自然のシッペ返しを喰らっているのだ。

治水工事だからといってオオタカが営巣するような深い森を伐採する。愚の骨頂である。

 ~終わり~

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