額に汗して働けば誰もが豊かになれた高度成長期。時代のまっただ中に生まれ育った龍作少年は、サンタクロースの存在を小学校3年まで信じていた。
クリスマスケーキも当たり前のような存在としてあった。
バブル経済の崩壊(1991~93年)を機に日本は坂道を転がり落ちはじめ、アベノミクスでどん底まで来た。ところが底なし沼であるため、貧困はどこまで進むのか見当もつかない。
きょうはクリスマスイブ。ジングルベルの賑やかなメロディーが街に響く。「不景気なんてどこの世界の話?」とでも言いたげだ。
何十年もクリスマスケーキなんて食べていない田中は、値段が知りたくて都内の洋菓子店を覗いた。値札を見て腰を抜かした。
「高嶺の花」などという代物ではない。仰ぎ見ることさえ憚られる値段である。
我が友人は啄木の「働けど働けど…」を地で行く。彼にとって12月24日は厄日だ。
「クリスマスイブの食卓にクリスマスケーキがない。だが小学校の娘は何ひとつ不平を言わない。それが悲しい」。
友人は能力もあり、寝る間も惜しんで働く。なのに生活は苦しい。
働いても働いても税金と社会保険料で持って行かれる。日本の政治は狂っている。
まっとうに働く父ちゃんが、クリスマスイブにケーキを買って帰ることのできる世の中にしなければならない。
~終わり~