蟻が巨象を倒した。戦わない連合系大労組から裏切られた組合員4人が『個人』で裁判を起こし、巨大企業に勝訴したのである。
労働組合(JR東労組)からの脱退を強要された(当時)組合員4人が、JR東日本を相手取って損害賠償を求めた裁判の判決が、きょう10日、東京地裁であった。
裁判所は、現場の所属長による不当労働行為(脱退強要)と、JR東日本の使用者責任を認める判決を言い渡した。
提訴(2019年)自体が労働運動の氷河期を象徴していた。
経緯はこうだ―
訴状によると原告の1人(39歳=当時)は2018年11月、所属先の運輸区長らから懇親会の席上で「まだ組合辞めないの?」「いつ辞めんだ?」「早く辞めろよ」などと露骨に脱退を求められた。
労働組合からの脱退強要は明らかな不当労働行為である。憲法28条が保証する労働者の権利(団結権)を侵害しているからだ。
不当労働行為があった場合、通常は労働委員会に救済裁定を申請する。ところが本件は異例で不自然な展開を遂げた。
JR東日本から組合脱退を強要された組合員は東京都労働委員会と茨城県労働委員会に救済裁定を申し立てた。ここまでは順当だった。
ところが、組合の大会で取り下げが決議され、これを受けて組合本部は取り下げを指令したのである。
泣き寝入りするわけにはいかない。憲法にも違反する労働組合から脱退を強要された4人は個人で裁判を起こしたのである。動かぬ証拠である脱退強要の音声はICレコーダーでしっかり残していた。
これを機に戦う労働組合JTSU(JR東日本輸送サービス労働組合=組合員数2,800名)が結成され、4人は現在このJTSUに所属する。
「あったことをなかったことにできない」が原告たちと仲間の労働者を支え続けてきた。
もし彼らが戦わなかったら、憲法違反にあたる不当労働行為は「なかったことにされたまま」歴史の中に埋もれ去っていた。
~終わり~
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