世界最強といわれる欧米の戦車がウクライナに大量に供与される。
欧州各国は「レオパルト2」を、米国は「M1エイブラムス」を供与する。最終的には150台に上るものと見られる。
泥濘期が終わる春以降は、戦闘員の訓練も済んでいるだろう。大戦車軍団がウクライナの大地に立ちはだかれば、ロシア軍にとって大きな脅威となる。
田中は親米ではない。パレスチナ紛争の拙リポートを見ていただければお分かりいただけるようにコテコテの反米である。
かといって親露派の御仁たちのように「ロシアは負けない。ロシアが勝つんだ」とも言わない。
はっきり言えるのは、ウクライナ戦線でロシア軍の衰退が明らかになれば、他の地域で軍事力の均衡が崩れるということだ。
具体的に言えば、アゼルバイジャンとアルメニアの双方が領有を主張して衝突が絶えないナゴルノ・カラバフである。
2020年のナゴルノ・カラバフ戦争で仲裁に入ったロシアが、平和維持部隊と軍を駐留させていた。
ところが、昨年12月、片一方の紛争当事国であるアゼルバイジャンが、ナゴルノ・カラバフを軍事封鎖してしまったのである。封鎖は今も続き住民12万人が人道危機にさらされている。
ロシア軍がウクライナ戦線で苦戦しているところに付け込んだのが、アゼルバイジャンだった。後ろ盾はトルコである。
軍事封鎖に先立って、アゼルバイジャンはアルメニア本土を砲撃した。ロシアの出方を窺ったのである。
アルメニアとロシアは軍事同盟を結んでいる。にもかかわらずロシアは動かなかった。いや動けなかった。面目丸つぶれである。ロシアはウクライナ戦線で手一杯なのだ。
ナゴルノ・カラバフ出身のジャーナリストは「ウクライナでロシアが負ければヨーロッパ諸国は喜ぶだろうが、アルツァフ(=ナゴルノ・カラバフ)ではアゼルバイジャンによる虐殺が起きる」と悲壮な表情で語った。
世界は玉突きのようにして動く。米国の陰謀論で動いているのではない。
~終わり~