【アルメニア発】紛争地育ちは国際政治のリアル知る

自分を育んだ大地にミサイルが突き刺さる。それでもリカさんは顔色ひとつ変えず取材を続けていた。=2020年、ナゴルノ・カラバフ 写真:本人提供=

 北朝鮮が放った飛翔体は1時間も前に海に落ちているのに、記者がヘルメットを被ってリポートする極東の某国。

 実際にミサイルが落ちてくる地域のジャーナリストは御覧のようにヘルメットは着用していない。

 実際にミサイルが落ちてくる地域とは、アゼルバイジャンとアルメニアの両国が領有を主張して紛争が絶えないナゴルノ・カラバフだ。民族浄化の応酬が繰り広げられてきた。

 2020年の戦争では、ロシアの仲裁で大規模虐殺だけは免れた。以後、ロシア軍が平和維持部隊として駐留する。

 そのロシア軍はウクライナ戦線で苦戦する。そこを見透かしたアゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフを軍事封鎖してしまった。40日が経つ。ロシア軍のメンツ丸潰れである。

 封鎖されたナゴルノ・カラバフ(人口12万人)は食料品や医薬品が途絶え人道危機が発生している。

 アゼルバイジャンの蛮行は、国際社会の批判を浴びて然るべきなのだが、批判の大合唱は起きていない。なぜか? 

 ナゴルノ・カラバフ戦争の不条理を訴えて世界を回るジャーナリストのリカ・ザッカリヤンさん(写真)は、つぎのように指摘する。リカさんは生まれも育ちもナゴルノ・カラバフだ。

 「ロシアを経済制裁しているため各国はアゼルバイジャンから天然ガスを買っている。だから強いことは言えない。封鎖を見て見ぬふり」

 「国際社会はウクライナ戦争でロシアを批判するけどロシアが負けるとナゴルノ・カラバフで虐殺が起きる」。リカさんの顔は見る見る曇った。

この日リカさんは、アゼルバイジャンに封鎖されたため自宅に帰れなくなった子どもたちを取材した。=15日、ゴリス 撮影:田中龍作=

 ロシアはウクライナでは悪魔のような存在だが、ナゴルノ・カラバフでは頼れる存在だったのである。国際政治の現実でもある。

 ところが日本では現実離れした言説がまかり通っている。

 一部の国会議員までもがロシアのプロパガンダを口移しで唱えるありさまだ。

 一部のインテリ層はエマニュエル・トッドのインチキ本を信じ込み、「ヨーロッパやウクライナにも非がある」などと言い出す。

 国会議員にせよ一部のインテリ層にせよ、自分でつかんだ情報ではないのだ。

 金融の世界では「市場のことは市場に聞け」と言われる。

 「国際政治のリアルは紛争地で育ったジャーナリストに聞け」と言えないだろうか。

     ~終わり~

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