ウクライナはそれでも戦う 「我々には選択肢がない」


軍事教練を受ける10代の女性たち。ロシアが全面侵攻してくる19日前だった。=2022年2月5日、キーウ 撮影:田中龍作=

 2022年2月24日未明、キーウ空港方面に雷が落ちたような激しい爆撃音が響いた。私は投宿先のホテルからタクシーを走らせた。空港は治安部隊によって封鎖されていた。

 道路は西に向けて脱出する人々で大渋滞だ。

 ロシアがウクライナに全面侵攻した日から2年が経つ。

 ピュンピュン飛び交う弾丸の下を、腰をかがめながら共に掻い潜ったフィクサー(通訳兼案内人)からDMが届いた。

 内外のメディアが報じているように戦況は厳しいようだ。

 「ウクライナは東部ドネツク州の戦略要衝アウディウカを最近失ったのだが、失地はさらに広がりそうだ。理由は米国から支給される砲弾の不足だ。欧米諸国は言葉は雄弁だが、実行が伴わない」

 「春には成人男性(25歳~60歳)に総動員令が下るかもしれない。誰も死にたくはない」

 「かといってウクライナには選択肢がない。降伏すれば国土のそこかしこがブチャのようになるだけだ。ロシアは残虐だ」

 「援助があろうがなかろうが、我々は戦うしかない」。

ロシア軍陸上部隊が首都中心部に侵攻してくるのを防ぐバリケード。路面電車まで用いられていた。=2022年3月、キーウ 撮影:田中龍作=

 ~ウクライナを強奪してアルメニアを失ったロシア~

 かりにロシアがウクライナ東部戦線で勝利しても、無理に無理を重ねたために、自ら同盟国を守ることができなくなった。

 アルメニアはロシアが主導する「集団安全保障条約機構」(CSTO)の一員だったが、ナゴルノ・カラバフ地方がアゼルバイジャンにより軍事封鎖※された際、ロシア軍は助けてはくれなかった。駐留していながらだ。(※2022年12月~23年9月)

 食料や医薬品が枯渇し住民は虐殺の恐怖に怯えながら10ヵ月を耐えたのである。住民の中には、パルチザンとしてアゼルバイジャン軍と戦った私の友人もいた。

 当然、アルメニアはロシア離れを加速させた。昨年9月には米国と合同軍事演習を実施し、プーチン大統領の反発を買ったのである。

 米国にとって最も手ごわい国イランと国境を接するアルメニアを自陣に引き入れる効果は大きい。これまではロシア陣営だったアルメニアを、だ。 

 ロシアはウクライナの一角を奪うことで西進できるかもしれないが、米ロが角逐する南コーカサスで形勢不利となった。

係争地ナゴルノ・カラバフに展開するロシア軍。アゼルバイジャン軍が侵攻してきても抑止力にならなかった。=2020年、撮影:田中龍作=

 ~終わり~

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