
スターリンがポーランドに建てた文化科学宮殿。「ワルシャワで一番眺めがいいのは文化科学宮殿の屋上。理由は宮殿を観なくて済むから」という小噺まである。権威の象徴のような醜悪な建築様式である。=19日、ワルシャワ 撮影:田中龍作=
ウクライナ戦争の停戦条件をめぐるプーチンとの協議で、トランプが鉱物資源を強硬に主張しているようだ。
何を今さら、である。2014年3月、ロシア軍はクリミア半島に電撃侵攻し、そのままシームレスでドンバスになだれ込んだ。
ウクライナはロシアのドンバス侵攻後、応戦するようになった。
田中は現地で取材していたのだが、その頃からアメリカは戦費を肩代わりするカタに鉱物資源を持っていくことになっていたのだ。田中の取材を手伝ってくれていた大学の先生から聞いた話だ。
米国がウクライナの軍人に「軍事を増強せよ(=米製兵器をもっと買え)」と迫っていた頃だ。この現場も田中は見ている。

ポーランドを散々苦しめたナチスを忘れない。日本のように歴史を顧みない国ではないのだ。=19日、ワルシャワ蜂起博物館 撮影:田中龍作=
ウクライナをめぐるトランプとプーチンの協議で思い出すのが、第2次世界大戦前夜、ヒトラーとスターリンの間で交わされたポーランド分割密約である。表看板は両国の不可侵条約である。締結は1939年8月23日。
不可侵条約に基づきナチスドイツはポーランドに西から侵攻し、第2次世界大戦の火ぶたは切られた。同年9月1日のことだ。不可侵条約締結から1週間後である。
さらに17日後、ソ連が東からポーランドに侵攻した。冷戦が終わるまでポーランド国民はソ連の圧政に苦しめられた。
今、ポーランドとバルト3国がロシアの脅威に備えて、対人地雷禁止条約からの脱退を用意するのは、国防上当然である。

ポーランド分割レリーフ。西半分はナチスが、東半分はソ連が占領している。=19日、ワルシャワ蜂起博物館 撮影:田中龍作=
10年も前にワルシャワでタクシーに乗った際、「ロシアとドイツとどちらが嫌いか」と田中が質問するとドライバーは間髪を入れず「両方」と答えた。
きょう19日、乗ったタクシーの運転手は「プーチンは必ず(definitely)ポーランドに攻め込んでくる」と真顔で言った。
「プーチンはソ連時代の版図を取り戻すつもりだ」と指摘する専門家は少なくない。
歴史は繰り返すのだろうか。
~終わり~
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【読者の皆様】
ウクライナ和平の行方に固唾を呑む東ヨーロッパの空気を自分の肌で確かめるために、田中は対ロ最前線のポーランドまで足を延ばしました。
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