ゼレンスキーは戦争を仕掛けるほどの玉ではない

ポロシェンコ前大統領は逮捕・収監をまぬがれ、支持者たちに親指を立てて見せた。=2022年2月19日、ペチェルスキー地裁前 撮影:田中龍作=

2022年2月17日、開戦の7日前のことである。ゼレンスキー大統領の政敵ポロシェンコ前大統領が外遊先から呼び戻された。元大統領は国家反逆罪の汚名がきせられていたのだ。元大統領はそのまま裁判所に出廷した。

判決公判は翌々日の19日、ペチェルスキー地裁前(キーウ)は前大統領の支持者で溢れ返った。シャーベット状の雪が舞うなか、ドラム缶を激しく打ち鳴らした。

元大統領は有罪判決を受け収監される可能性が高かった。政権の座を降りた元最高権力者が、新政権によってなぶりものにされるところは韓国によく似ている。

前大統領最側近のオレクサンダー・トゥルチノフ氏が「ヤバイ。もっと人を集めてくれ」と配下の者に指示を出しているのを、田中の通訳が傍受した。

トゥルチノフ氏は秘密警察の元長官。権力のやり口を知り尽くしている。氏が「ヤバイ」というのだから、有罪そして収監の危機が高まっていたのだろう。

ポロシェンコ氏の政党「欧州連帯」とウクライナ国旗が林立し、「ポロシェンコ」コールが響いた。=2022年2月17日、ペチェルスキー地裁前 撮影:田中龍作=

前大統領が収監されれば、支持者たちは独立広場(マイダン)にテントを張り長期の大規模デモを展開する予定だった。2014年のマイダンが再現されるのだ。

ウクライナが内乱状態となることは避けられない。ロシアは手もなくウクライナを陥れるだろう。

危機を察知したブリンケン米国務長官が、キーウにすっ飛んできた。米国務長官はゼレンスキーに強い言葉を浴びせた。『前大統領を収監すれば内乱となりロシアの思うツボだぞ』と。「強い言葉」とは叱ったという意味だ。

ブリンケン米国務長官の意向に従いゼレンスキーは前大統領を収監できなかった。

判決は「パスポート没収の必要あり」「キエフから外に出る時は裁判所の許可が必要」などとする程度だった。

2022年2月19日、ロシアの全面侵攻5日前である。ブリンケン米国務長官なかりせば、ウクライナはロシアの餌食となっていたことだろう。

米国務長官を褒めているのではない。ゼレンスキーは戦争を仕掛けるほどの玉ではないのだ。


「ウクライナにはポロシェンコという火薬が必要」。政権転覆を呼びかける横断幕。=2022年2月17日、ペチェルスキー地裁前 撮影:田中龍作=

 ~終わり~

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