日比谷・ウォール街・パリ 99%の怒り ~田中龍作が現場から告発した10年

ステューデントローン(日本の奨学金)の負担の大きさに抗議するプラカード。横にはテントからあぶれ寝袋にくるまる占拠者=2011年11月、ウォール街 撮影:田中龍作=

 2011年11月、ニューヨーク・ウォール街の公園はテント村と化していた。3年前、日比谷公園に出現した派遣村と同じ光景ではないか。

 仕事をしていても食べていけない。仕事を突然、失ってしまった…強欲資本主義の犠牲となった人々が、炊き出しに列をなし、テントで雨露を凌いだのである。

 当時(2011年10月)の米政府統計によると―

 16歳から24歳までの失業率は16・7%にものぼる。うち大卒の失業率は7・7%、高卒は21・1%。6人に1人が職を持っていない。

 公園の一角には医療テントもあった。1日平均40人が診療に訪れていた。看護師によると「(テント村の)多くの患者は10年以上も病院にかかっていない」。

 アメリカの健康保険は富裕層でなければ、保険料を支払えない。中間層以下は、収入のすべてを健康保険につぎ込むことになる。

 健康保険なしだと病院に行っただけで500ドルも請求される(当時)。診療は当然バカ高い。中間層以下が病院にかかることは不可能なのだ。

 ウォール街の公園で見た光景は、こと医療に関しては、日本の将来を予言しているようだった。

 「我々は99%だ」。生きたくても生きてゆけない米国の庶民たちは、ウォール街の公園を2ヵ月余りにわたって占拠した。

イエローベストたちはバリケードを築きながら凱旋門に迫って行った。=2018年12月、シャンゼリゼ通り 撮影:田中龍作=

 強欲資本主義は進化を遂げていった。ウォール街の公園占拠から7年-

 カネ持ち優遇のために収奪されるフランスの「99%」が蜂起した。毎週土曜日、各地でデモをかけ銀行やスタバを破壊した。スタバは強欲資本主義の総本山である米国の象徴だからだ。

 デモ参加者の全員が黄色いベストを着用していることから「イエローベスト運動」と呼ばれる。

 社会保障費の掛け金や公共料金の値上げは法人税減税の穴埋めに使われる。労働者の実質賃金は下がる一方だ。
 
フランス国立統計経済研究所によれば、手取り月収1,170ユーロ(15万228円)以下の貧困層は600万人、労働人口の20%強にのぼる。

 野党は圧倒的に弱く、労働組合は頼りない。マクロン大統領は、議会に諮ることなく大統領令で金持ち優遇政策を進めた。

マクロン政権の政治手法は、閣議決定で何でも片付ける安倍政権と瓜二つ。フランスの政治・社会状況は日本と酷似していた。

 2019年、舞台は再び日本へ。額に汗して働いても食べて行けない労働者のために「大人食堂」が出現したのだ。(2020年1月現在、仙台と東京)。10年経ち、年越し派遣村は常態化してしまった。

 富は1%の人々にさらに集まり、99%の人々はさらにむしりとられる。

大人食堂。会場は利用者で一杯となった。=昨年12月31日、都内 撮影:田中龍作=

  ~終わり~

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