「秘密保護法が施行されたらこうなる」というような判決が米国で言い渡された。同法の制定を日本に強く働きかけた米国の事例は、日本の明日を予告しているようだ。
アノニマスの一員でハクティビスト(Hacktivist=ハッカー&アクティビストの合成語)のジェレミー・ハモンド被告(28歳)は16日(日本時間)、PC不正防止法違反などの罪により、NY連邦地方裁判所で禁固10年の判決を受けた。
ハモンド被告の罪状は―
アメリカの民間情報機関・ストラトフォー(Stratfor)のデータベースにサイバー攻撃し、顧客情報、メールの内容を収集し、ウィキリークスに渡した。盗んだメールの件数は300万件にものぼる。
ハモンド被告がハッキングしたストラトフォーは、インテリジェンス(高度な軍事、外交情報)を提供する企業で、顧客は国防総省、国土安全保障省、DIA(米軍情報部)、ロッキード社、グラマン社などだ。影のCIAとも呼ばれる。
ハモンド被告が暴露したとされる情報は――
その1)2010年当時、政府の対テロリズムアドバイザーだったジョン・ブレナン氏(現CIA長官)が、ジャーナリストを魔女狩りしている。(ターゲットとされたジャーナリストは、調査報道を手がけるフリーランスが中心。)
その2)民間情報機関が政府と共同で、ジャーナリストと市民運動家による集団「US DAY of Rage」をアルカイーダと関係づけようと動いていた。
その3)有力メディアとストラトフォー社が密接な関係にあり、メディアは政権に都合のよい論調を掲載している。
政府にとって国民に知られたくない情報を明るみに出したのがハモンド被告だった。政権と癒着していたことを暴かれた米国の既存メディアは、この事件をあまり扱っていない。事件は闇に葬られる恐れもある。
日本の特定秘密保護法に当てはめると、ストラトフォーは、政府の秘密情報を扱う契約業者にあたる。政府にとって不都合な人物を狙い撃ちできる。「知る権利」なんぞあったものではない所も秘密保護法と似ている。
ハモンド被告の他には、米政府と民間業者の不適切な関係を暴き、ガーディアン紙に記事を提供したフリー記者のバーレット・ブラウン被告がいる。メキシコの麻薬戦争を調査報道していたブラウン被告は昨年9月、FBIに拘束された。17もの罪状で禁固100年以上が求刑されるものと見られている。
元NYタイムズのクリス・ヘッジズ記者(ピューリッツアー賞受賞、現在フリー記者)は「ハモンド、スノーデン、マニング、アサンジ、ブラウンのような人物なしに報道の自由はない」と指摘している。
ハモンド被告はアノニマスを通じて次のような声明を出した――
「私は不正を明るみに出し、権力と戦う責任があると思い、自分のスキルを使った。真実に光をともすために」。