
『報道の自由賞』を受賞する鈴木エイト。=2022年、日本外国特派員協会 撮影:田中龍作=
2022年夏、安倍元首相を銃撃し殺害した統一教会信者の息子・山上徹也被告に対する論告求刑公判がきょう、奈良地裁であり、検察は無期懲役を求刑した。
前代未聞の事件なのだが、統一教会は自民党と持ちつ持たれつだったため新聞テレビの記者はまともに取材していなかった。タブーだったのだ。
20年も前から統一教会をひとり黙々と追っていた鈴木エイトは、メディアの寵児となった。
教団や権力者にとって不都合な事柄が、鈴木のペンによって次々と明るみに出た。彼は惜しみなくマスコミにも情報提供していた。
政治家と教団との関係について検証がなされないままナシ崩しにされたら、また同じような事件が起きる、と考えたからだ。
検証されては困る政治家や教団にとって鈴木は目障りな存在となる。消してしまいたくなる。

衆院選挙で応援演説に入った安倍首相(当時)。=2017年、秋葉原 撮影:田中龍作=
鈴木の身の安全が心配になった田中は、彼の携帯に電話を入れ、「地下鉄のホームでは壁を背中にしてね」と告げた。
田中は2011年の原発事故直後にある国会議員から受けた忠告を、それをそのまま鈴木に言ったのだった。
鈴木が20年にわたって培ってきた情報網は驚嘆に値する。当の政治家にまつわる教団との関係を当の政治家以上に把握しているのである。理由はあえて述べないことにする。

テレビ局の取材を受ける鈴木エイト。=2022年、日本外国特派員協会 撮影:田中龍作=
自民党が絡んだ犯罪を新聞テレビに任せていたら、自民党にとって都合のよい方向に誘導されるだけだ。
小沢一郎を陥れ政権奪取後間もない民主党を潰した陸山会事件(2006~2012年)を見れば分かる。
裁判官も人の子だ。マスコミ報道によって心証形成される。田中の知る判事は朝日新聞を2部取っていた。一部は読むだけ。もう一部は保存用。
今回の事件では鈴木の情報もあって記者クラブメディアといえども、陸山会事件ほど権力ベッタリの報道はできなかった。
カルトが国家を牛耳るという歴史上稀に見る惨事が、鈴木の精魂傾けた取材によって明らかになった。《文中敬称略》
~終わり~
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