福島原発事故から2年8ヵ月が経つ。被災者救済は遅々として進まない。そればかりか切り捨てられる恐れさえ出てきた。危機感を募らせる福島の住民や避難者たちがきょう、「原発事故被害者の救済」を求めて国会に請願した。
原発事故被害者には3つの大きな「バカの壁」が立ちはだかる―「実態なき子ども被災者支援法」「時効=損害賠償の請求権が3年で消滅」「被ばく許容基準の引き上げ」だ。
子ども被災者支援法をめぐっては「基本理念に沿った方針がないのは違法である」として福島の住民や避難者が8月、政府を相手どって提訴した。
それから約2ヵ月後、政府(復興庁)は取り繕うように「基本方針」を打ち出すのだが、これまた絵に描いたようにズサンな政策だった。支援の枠組みからこぼれる原発事故被害者があまりに多いのである。
差し迫る時効の危機はさらに深刻だ。東電に対する損害賠償の請求権が来年3月で時効を迎える。被害者たちは特別立法で時効を10年にするよう求めている。
被ばく許容基準の引き上げは避難者にとって拷問にも等しい。原子力ムラの意向を汲んだのか、原子力規制委員会は、「帰還にあたっては年間の追加被ばく線量を20ミリシーベルト以下とする」方針をまとめた。
事故後しばらく、校庭の基準線量は年間20ミリシーベルト以下だった。あまりにも甘すぎる基準の撤廃を求めて父母たちが文科省の中庭に座り込むなどした。
その後、文科省は20ミリシーベルトを撤廃し、1ミリシーベルト以下を目標とした。今回、原子力規制委員会が打ち出した方針は、時代に逆向するものだ。福島のある父親は「文科省中庭での座り込みは何だったのか?」と嘆いた。
国会への請願に先立ち日比谷コンベンションホールで集会が開かれた。福島市から妻子と共に札幌市に避難している中手聖一さんは、こう窮状を訴えた―「自主避難者の貧困が問題になっている。貯金は底を突きつつある。だが現状の壁は高い。失望感が大きい…」
郡山市在住の森園和重さんは「20ミリシーベルトでいいと言うのなら、我が家を提供するから福島に住んでもらいたい」と語気を強めた。
福島の住民や避難者たち約200人は集会後、国会に請願に向かった。請願の内容は「子ども被災者支援法の十分かつ具体的な施策の実施を求める」「(東電への)賠償請求の時効問題を解決するための特別立法を求める」などとなっている。
国会の議員面会所では社民、民主、みんな、共産の議員たちが出迎えた。避難者たちは7万9,856筆(10月末現在)の署名を議員たちに手渡した。みんなの党の渡辺喜美代表は「子供と妊婦を守るという原点に立ち帰って基本計画を練り直したい」と応えた。
国会は原発推進の自民党が安定多数を握り、電力総連、電機労連に支えられた民主党が野党第一党だ。絶望的な状況のなか、請願が実を結ぶには世論の力しかない。
◇
『田中龍作ジャーナル』は読者のご支援により維持されています…https://tanakaryusaku.jp/donation