
激戦地のヒエーム村隣接エリア。ドーンという轟音と共に黒煙と白煙が噴き上がった。=31日、撮影:田中龍作=
イスラエル国境までわずか10キロのエル・バル・サキ村。絵に描いたような長閑な村だ。戦前の人口は500人。すでに400人が避難した。宗派構成はイスラム教ドルーズ派とキリスト教。
イスラエル軍とヒズボラが交戦するヒエーム村は、南西に5キロの所にある。ヒエーム村は白リン弾が使用されたとの情報もある激戦地だ。
「シュシュシュ」「ドーン」。ヒズボラがロケット弾を放てば、イスラエル軍はミサイルを落とす。
取材車から降りると村の中年女性2人が近づいて来て、忠告するように言った。「村の写真は撮らないで下さいね。(イスラエル軍に)攻撃されますから」。
理由はこうだ―
前回(2024年)の戦争で、村の高台から激戦地のヒエーム村を撮影していた男性が、イスラエル軍の爆撃で殺害された。
今回の戦争では現在(3月31日)のところ死者はゼロ人。カメラ撮影の禁止が徹底されていることが理由に挙げられる。激戦地を一望できる高台も封鎖されている。

イスラエル軍の爆撃で倒壊した家屋。=31日、ナバティーニ地域 撮影:田中龍作=
同じくイスラエル国境までわずか10キロのマージャンユーン村。戦前の人口7千人。村の中心部に広場があり商店や飲食店が集まる。映画『ニューシネマパラダイス』に出て来るような村だ。こちらも宗派構成はイスラム教ドルーズ派とキリスト教。
イスラエル軍とヒズボラが激しく交戦するヒエーム村は、南東に5キロの所にある。隣のエル・バル・サキ村同様、爆撃音を間近に聞く。
こちらもイスラエル軍による空からの監視は厳しい。先月、海外のジャーナリストが映像を撮影したところ、イスラエル軍の爆撃に遭い村人1人が殺害された。
このためジャーナリストが村に侵入してくることに村人たちはピリピリしている。カメラを振り回そうものなら警察に突き出される。
田中はカメラを車の座席の下に置き、見られないようにしていたが、よそ者に対する警戒は厳しい。ジャーナリストと分かるとパトカーが来た。
警察官がパトカーの中から田中に「出て行ってくれ」と告げると、取材車が村を出るまで付いてきた。
映像は戦争の現状を世界に伝えるために欠くことができないが、地元住民を危険にさらす。何ともやり切れない。

エル・バル・サキ村にはUNFIL(国連レバノン暫定駐留軍)の基地がある。村人がいくら自衛してもイスラエル軍の攻撃対象にもなりうる。=31日、撮影:田中龍作=
~終わり~
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ベトナム戦争がそうであったようにジャーナリズムは反戦世論の形成に不可欠です。一方で住民の命を奪うこともあります。
矛盾を抱えながらの取材ですが、事態を一歩でも良い方向に前進させることができれば、と思っております。
カードをこすりまくってのレバノン取材です。ご支援何とぞ御願い申し上げます。
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