【ガザ報告】 外国人記者がイスラエル軍に殺されない理由

イスラエル軍から警告弾を落とされ、取材拠点のビルから脱出したパレスチナ人記者たち。6時間後に「本爆撃」があった。=7月27日、ガザ市内 写真:筆者=

イスラエル軍から警告弾を落とされ、取材拠点のビルから脱出したパレスチナ人記者たち。6時間後に「本爆撃」があった。=7月27日、ガザ市内 写真:筆者=

 今回のガザ戦争では17人のジャーナリスト(コーディネーター含む)が命を落としている。(8月18日現在)

 うち外国人ジャーナリストは1人。死者は全員と言っていいくらい地元パレスチナ人ジャーナリストだ。

 ただ一人死亡した外国人ジャーナリストは、イタリア人カメラマンで、不発弾の爆発に巻き込まれての事故だった。イスラエル軍による「直接の攻撃」に殺(や)られたわけではない。

 地元パレスチナ人ジャーナリストたちは、爆撃された現場に直行する。そして2発目、3発目の犠牲になる。殺意の有無はさておき、イスラエル軍に「直接」殺されているのだ。

 地元ジャーナリストたちの取材拠点がピンポイント爆撃されたことがあった。ここはハマスとは無関係である。

 イスラエルは、ガザの実情を知り尽くしている地元ジャーナリストが世界に向けて発信することを快く思わない。取材拠点をわざわざピンポイントで狙ったのは、そのためだろう。

 大半の外国人記者はイスラエル軍の関係機関に自分の「携帯電話番号」「メアド」「宿泊先」を通知する。ガザのゲートを管理しているのがイスラエル軍だからだ。ガザから退出する際に“お世話になる”。

 爆撃から身を守る必要もある。イスラエル軍がメールで「今夜、ガザ市内でも空爆があるので外出するな」と知らせてきたりする。

 今回の戦争で外国人ジャーナリストは直接攻撃されていない。イスラエル軍は、パレスチナ人記者と外国人記者を識別できるのである。

 携帯電話だ。携帯電話に付いているGPS機能により、イスラエル軍は外国人記者の位置を特定できる。

 田中は臆病者ゆえ、イスラエル軍にしっかり自分の携帯電話番号を知らせた。

「爆撃に遭わない」ことを 売り にするホテル。海外メディアのジャーナリストたちが多く利用する。=ガザ市内 写真:筆者=

「爆撃に遭わない」ことを 売り にするホテル。海外メディアのジャーナリストたちが多く利用する。=ガザ市内 写真:筆者=

 イスラエル軍は、外国人記者を爆撃に巻き込むことだけは避けたい、と思っているようだ。

 7月17日夜、外国人記者たちが滞在しているガザ市内の海岸沿いのホテルにイスラエル軍から「爆撃予告」があった。「(爆撃対象になっているので)20~30分以内に退出しろ」という内容だった。

 爆撃予告には3通りある―
1、爆撃5~10分前
2、警告弾投下
3、一切予告なし

 「20~30分前」の爆撃予告は相当な “優遇” である。イスラエル軍が外国人記者たちの安全に配慮している証左でもある。

 外国人記者が守られている極め付けのケースがある。ガザから退出する際の安全誘導だ。イスラエル軍の関係機関(※)から「某日の某時までエレツ検問所(正確にはエレツ検問所すぐ近くのハマウダ広場)まで来られたし」とメールが来る。

 エレツ検問所とはガザ最北部のゲートだ。イスラエルが厳重に管理する。

 ガザを出入りする「人間用ゲート」は二つだけ。イスラエル側のエレツとエジプト側のラファだ。ほとんどのジャーナリストはエレツを利用する。

 ところがエレツ検問所に行くには最激戦地のベイトハヌーンを通らなければならない。イスラエルによる誘導なしでゲートまで行くのは自殺行為に他ならないのだ。 

 イスラエル軍の関係機関が指定した時間、イスラエル軍はホテルからゲートまでのエリアの爆撃を控える。外国の記者たちは安全にガザから退出できる、という訳だ。送迎バスが出ていた時期もあった。

 外国人記者の安全を二重三重に守るイスラエルが、海外メディアに期待する見返りは何か。今回の戦争に限っていえば、虐殺などの重大局面で、海外メディアの報道がイスラエルに決定打を与えるようなことはなかった。

 筆者は2度ほどイスラエル軍から警告弾を落とされた。初期の頃は届いていた「ゲートへの安全誘導のお知らせメール」も、途中から来なくなった。


 ※
イスラエル軍の関係機関CLA(Cordination Liason Administration for Gaza)

パレスチナ(ガザ・西岸)

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