ワタミ過労死裁判 全国津々浦々の店舗で労基法破り

美菜さんの遺影と共に報告集会に臨む両親。=22日、日本弁護士会館 写真:筆者=

美菜さんの遺影と共に報告集会に臨む両親。=22日、日本弁護士会館 写真:筆者=

 「残業代未払い」「30日以前の解雇通告なし」…ブラック企業の実態が公文書で明らかにされた。

 過酷な勤務の果てに自殺に追い込まれた大手居酒屋チェーン和民の元正社員の父母が、会社と創業者の渡辺美樹氏(現参院議員)の責任を追及する「ワタミ過労死裁判」の第5回口頭弁論が、きょう、東京地裁であった。

 原告は2008年6月、和民の社宅が入るビルから飛び降り自殺した森美菜さん(享年26歳)の父・豪さんと母・祐子さん。

 被告は美菜さんを直接雇用していたワタミフードサービスと親会社のワタミ、創業者の渡辺美樹氏。

 訴えによると2008年4月、ワタミフードサービスに入社した美菜さんは、月100時間を超える残業と過酷なノルマに追われた。心身ともに疲れ果てた美菜さんは2か月後に自殺した。

 手帳には「体が痛いです。体が辛いです。どうか助けて下さい」と書き遺されていた。

 原告(父母)は「被告(ワタミ)は安全配慮義務を怠った」としているが、被告は否定している。

 ワタミの過重労働を公的に証明するものとして労基署の「是正勧告」と「指導票」がある。

 ワタミフードサービスは全国の労働基準監督署から、わかっているだけでも24件の是正勧告、17件の指導票を受けている。「是正勧告」は、労働基準法違反を指摘し是正を求めたものだ。レッドカードに相当する。

 原告は「是正勧告」と「指導票」の提出を求めてきた。

 被告は「(本件裁判との)関連性がない」などとして拒否してきたが、きょう、すべての是正勧告書と指導票を渋々提出した。

労基署がワタミフードサービスに突き付けたレッドカード=是正勧告書。=写真:筆者=

労基署がワタミフードサービスに突き付けたレッドカード=是正勧告書。=写真:筆者=

 全国津々浦々の和民で労基法違反が まかり通っていた ことを公的文書が明らかにしたのである。次のような内容だ―

・平成20年(2008年)6月27日 和民香里園駅前店 労働基準法37条違反 ~北大阪労基署
『平成18年9月以前2年間の時間外手当及び深夜手当の一部分を支払っていない』 

・平成21年11月30日 和民原宿明治通店 労働基準法20条 違反 ~渋谷労基署
『平成21年10月9日に解雇するにあたり、30日以前に予告していないのに30日分の解雇手当を払っていない』

・平成20年4月21日 和民柏店 労働安全衛生法66条違反 ~柏労基署
『健康診断を行っていない』 

 口頭弁論後、開かれた報告集会で父親の豪さんは、ワタミの対応について感想を述べた―

 「求めていた是正勧告書、指導票は(思ったことを)裏付けている。やっぱりな。美奈が勤め始めた頃すでに勧告書が出ていた。(ワタミは)“どうしてか分かりません”と言っていたが、分かっていた。全て事実を隠していたんだな」。

 きょうの法廷では「是正勧告」の他にも驚かされたことがある。被告が「美菜さんとの間に雇用関係がない」と主張していることが明らかになったのである。

 原告弁護団によると―

 美菜さんは入社式での配属希望アンケートで「外食」に印をつけた。美菜さんが就職したのは、ワタミフードサービスであって、ワタミ本社ではない。この時点でワタミ本社と美菜さんとの間に雇用関係はなくなった。

 ワタミ本体と渡辺美樹氏の責任には当たらないという理屈である。美菜さんには渡辺美樹CEO本人の名前で辞令が交付されているのにもかかわらず、だ。

 著しく常識を欠いた主張だ。労基法違反の限りを尽くしても責任が問われないのであれば、労働者は無法地帯で働かされていることになる。日本中の会社がブラック企業になってしまう。

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