庶民の多くが望んでもいない2020年のオリンピック開催地を、水面下の交渉で勝ち取った東京都の猪瀬直樹知事らが、今夜、凱旋記者会見を開いた。
猪瀬知事は誇らしげだった。まず安倍首相はじめ国会議員、都議会議員、皇室、都職員などが一体となったオールジャパンを強調した。
「この不確実な世界情勢の中で平和のトップリーダーとしてオールジャパン体制で2020年を最高の大会に仕上げていかなくてはいけない」。猪瀬知事は謳いあげるようだった。
招致委員会副会長の森喜朗元首相は、水面下の工作を匂わせた―
「人の心は変化する。その人の心をどうやって日本に向けていくか。JOCだけでは絶対できない。(IOC委員には)王室もおられる、選手もいる、いろいろな立場の人がいる。全ての手段を調べ上げた。政界、官界、スポーツ界、あらゆる手立てで…」
続いて、プレゼンテーターを務めた滝川クリステル(タレント)、太田雄貴(フェンシング選手)らも喜びを語った。
この後、記者団との質疑応答に移った。指名されたのは4社だけ。厳しい質問は一つも出なかった。
日本テレビの女性キャスターはオリンピック推進勢力が泣いて喜ぶような質問をした―「2020年まであと7年、東京がどう変わっていってほしいか?」と。
猪瀬知事:
「2020年という目標に、我々が心のデフレを取り払って、画一的でなくスポーツを楽しみ、そして消費生活を豊かにする。そういう世界を取り戻したい、あるいは作り上げたいと思う」。
森元首相:
「人間教育というのは、勉強で頭に刷り込むことも大事だが、スポーツは一番いい人間教育を体感することになる」。
水野正人(招致委員会・副理事長):
「私たちはIOCの皆さんに対して安心・安全・確実ということを訴えて、すばらしい大会になりますよとお約束をした。2020年には終わりなのではなくて、それからのすばらしい社会のスタートだと、レガシーをしっかり残していくとお約束したい」。
オリンピックが開催されると「消費生活が豊かになる」(猪瀬知事)のは、前回の東京オリンピック(1964年)のように高度経済成長期であれば言える。だが、経済が没落する一方の国では夢物語にもならない。
「IOCに安全・安心を約束した」(水野副会長)は、オリンピックに乗じて原発事故を隠したい安倍政権の思惑とも重なる。
これから向こう7年間、オリンピック推進勢力のためにあるような記者会見が、繰り広げられる。マスコミ各社はどこも経営が厳しい。広告のためなら「ヨイショ質問」だって喜んでするだろう。今度ばかりは東京新聞も味方ではない。