デルタ株が猛威を振るうなか欲に凝り固まった大人が、子どもを危険な場所に送り込んだ。
1市3区を残して都内ほとんどの自治体が取り止めるなか、学校連携観戦プログラムを強行した杉並区。
田中はきょう28日、杉並区内のある小学校のようすを外から見守った。
朝7時過ぎから母親に付き添われた児童が次々と校門をくぐった。付き添いなしで来た児童もいた。
うれしそうな顔をした子どもは一人もいない。
母親は校門の外から心配そうに手を振った。
7時30分頃になると、児童の数は30人ほどになった。
男性教師が点呼を取り終え、校長先生が訓示を垂れた。どんな御高説を述べているのか、田中の耳には届かない。
7時35分、児童たちは迎えのバスに乗り込んだ。引率は校長と男性教師1人だ。
副校長だろうか。「楽しんできてね」と児童たち一人ひとりに声を掛けた。
撮影する田中を校長が制止した。「どこの社か?」と聞いてきた。
田中が「子どもたちを危険な所に連れて行って不安はないのですか?」と聞くと、校長は「公的行事だ」と答えた。表情には後ろめたさの欠片もなかった。
バスの行先は武蔵野の森総合スポーツプラザ(調布市)だ。児童たちは車いすバスケットボールを観戦するのである。
競技会場では防疫に欠くことができない水際対策を特例免除された外国の選手たちが、汗を流し激しくぶつかり合う。
感染性の強いデルタ株が飛び交う空気の中に児童たちは放り込まれるのである。子どもは先生や大人の言いつけを拒否できない。
26日、杉並区役所前であった「学校連携観戦プログラム」反対集会に参加した年配の女性は、行政と校長の姿勢に憤慨していた。
「コロナの中に放り込むのはガス室に送り込むのと同じ。田中良(区長)は自分の孫を連れて行かせるか? お前(田中区長)らはヒトラー以下だ」。彼女は言葉を極めた。
パラリンピック期間中、約2万人の小・中・高校生が、強欲な大人たちの犠牲となる。
~終わり~