再掲載 革命は生活苦が引き起こす 

戦車のエンジンがかかっても反ムバラク派の民衆は動かなかった。=2011年2月、カイロ 撮影:田中龍作=

治安部隊に踏み込まれた場合を考え、田中は取材した画像と情報を一分一秒でも早くアップロードしなければ、と焦った。取材は2011年2月。

  ■     ■

 最低賃金の引き上げを求めてゼネストを唱える若者のグループが、ネットでデモを呼びかけた。グループ(※)は現地で「チーム1月25日」と呼ばれるようになった。

 30余年にわたって続いた独裁政権を倒した大規模デモはこの日始まった。チームの呼称は日付にちなんだものだ。

 エジプトは地域の大国でもあることから、中東じゅうに吹き荒れた「アラブの春」のなかでも、影響はひと際大きかった。

 海外メディアに対する当局の報道規制は厳しく、ムバラク支持派の民衆は軍のお先棒を担いだ。

 週刊誌で名を馳せる某カメラマンは、入国の際、機材を没収された。ムバラク支持派の民衆に捕まり、ボコボコにされたあげく軍に突き出され、拘束されるジャーナリストが相次いだ。報道に接する度に「今度はオレの番か」と腹をくくった。

 投宿するホテルの正面玄関には戦車が横づけされていた。田中はいつも裏口から出入りした。

 軍用ヘリは民衆で埋め尽くされたタハリール広場の上を低空飛行で旋回した。一日中ひっきりなしだ。ローターの重低音は10年経った今も耳に響く。

 治安部隊が部屋に踏み込んで来ることを恐れ、現場で取材した情報(写真、原稿)は、一分一秒を急いでアップロードした。

ムバラク支持派との攻防は夜通し続いた。タハリール広場を守り抜いた反ムバラク派の民衆は快哉を叫んだ。=2011年2月、カイロ 撮影:田中龍作=

 田中がタハリール広場に出入りできたのは、投宿先のホテルが、反ムバラク派の民衆が押さえるゲートの傍だったからだ。

 反対側のゲートは親ムバラク派が押さえる。知らずにこちらを利用したジャーナリストは前述のように受難した。

 大規模デモはFacebookなどを通じて呼びかけられていたため、政府は一時、ネットを遮断した。

 だがムバラク打倒を叫ぶ人々は携帯電話のメッセージ機能で連絡を取り合った。政府の締め付けは裏目に出た。タハリール広場に集まる民衆の数は膨れ上がることになった。危機感から反発したのだ。

 アラブの春の発端はこうだった―

 前年(2010年)末、チュニジアで露天商の青年が行政の過剰な取り締まりに抗議して焼身自殺したのを機に、失業者たちが蜂起し、ついにはベンアリ大統領を国外に追放した。

 コロナの影響で事実上の失業者が激増し、国民が食えなくなっているのにもかかわらず、スガ政権の対応は、あまりにお粗末だ。棄民政策と言っても差し支えないほど国民は蔑ろにされている。

 アラブの民衆だったらどう動くだろうか。

 (※)
海外メディアの呼称は「4月6日青年行動(6April Youth Movement)」となっている。

   ~終わり~

  ◇
田中龍作は世界どこに行っても民衆の立場から権力を監視します。取材費は読者のご支援により賄われています。↓

田中龍作の取材活動支援基金

■郵便局から振込みの場合

口座:ゆうちょ銀行
記号/10180 番号/62056751

■郵便振替口座

口座記号番号/00170‐0‐306911

■銀行から振込みの場合

口座:ゆうちょ銀行
店名/ゼロイチハチ・0一八(「ゆうちょ銀行」→「支店名」を読み出して『セ』を打って下さい)
店番/018 預金種目/普通預金 口座番号/6205675 口座名/『田中龍作の取材活動支援基金』

■ご足労をおかけしない為に

ゆうちょ銀行間で口座引き落としができます。一度窓口でお手続きして頂ければ、ATMに並んで頂く手間が省けます。印鑑と通帳をお持ち下さい。
記号/10180 番号/62056751 口座名/タナカリュウサクノシュザイカツドウシエンキキン

連絡先
tanakaryusaku@gmail.com
twitter.com/tanakaryusaku

エジプト

再掲載【パレスチナ発】少年は石を持っていなくてもイスラエル軍に射殺された

再掲載【クリミア発】 ロシア系住民にパスポート発給 本格介入の態勢整う 

再掲載【コソボ報告】欧州の中にアラブ、NATOが守る

再掲載【パレスチナ発】 虐殺を見届けられるのはジャーナリストだけである

再掲載【ナゴルノカラバフ報告】進化する楯と矛 極地戦でさえ兵器の実験場

再掲載【ナゴルノ・カラバフ発】児童「戦場を見ないで済む日本のような国になりたい」

田中龍作を戦場取材に行かせてください

【会計報告】 6月期

小池再選に怯える神田イチョウ並木

【都知事選】負けたけど横につながれた 蓮舫出馬で得たもの