
元BPO委員でジャーナリストの斎藤貴男さんは、NHKの番組でも散見される歴史修正主義を問題にした。=11日、NHK西口 撮影:田中龍作=
NHKのニュースって何で大本営発表が中心でお上の批判をしないのか。理由は至ってシンプルだ。
堅苦しくて恐縮だがNHKという組織の仕組みを簡単に説明する―
会長を任命するのはNHKの最高意思決定機関である経営委員会(放送法52条)となっているが、その経営委員会の委員12人は、衆参両院の同意を得て総理大臣が任命する(放送法31条)。
会長は経営委員会の同意を得て副会長、理事を任命する(放送法52条)。
会長が現場の記者の人事に口を出す由もないが、理事は政治部長の人事を左右し、政治部長は政治部記者の人事に絶大な権限を持つ。
現在の稲葉延雄会長は岸田元首相が連れて来たと言われている。
NHKは組織の頂点から第一線まで政治に支配されるシステムになっているのだ。

NHK放送センター。巨大な施設の一室で次期会長を決める経営委員会の指名部会が開かれていた。=11日、NHK西口より 撮影:田中龍作=
稲葉会長が来年1月24日で任期満了となり、新会長が来月上旬にも決まるものと見られている。
高市早苗氏がNHK会長の任命権者である内閣総理大臣になって初めての会長人事だ。氏は総務相時代に「停波」を仄めかし、放送局や大株主の新聞社を震えあがらせた人物である。
きょう11日は、NHK経営委員会の(会長)指名部会が開かれた。
それに合わせてNHK・OBやBPO(放送倫理・番組向上機構)の委員を務めたことのあるジャーナリストたちが、NHK西口玄関前で声をあげた-
「政権の指名する会長候補者をそのまま追認する人事は許さない」という主題だ。
NHKのチーフプロデューサーだった永田浩三さんは、従軍慰安婦制度を問うた番組を制作したところ、放送(2001年1月)直前に内容を劇的に変えさせられた。
安倍晋三官房副長官(当時)と自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」に改編の圧力をかけられたのである。
当時、永田さんは「政治部記者から台本を前に一字一句を改変するように指示された」と話した。
番組改編が朝日新聞などにリークされて表沙汰になると、「(政治部は)『圧力はなかった』などとするウソのニュースを報道させた」と明かした。
高市政権下、圧力や忖度でNHKの報道内容がますます権力寄りになることは避けられない。「おかしい」ことは「おかしい」と国民が声をあげて行く他ない。

昼食に出かけるNHK職員らに「会長人事の透明性を求める」チラシを配った。=11日、NHK西口 撮影:田中龍作=
~終わり~
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