
ロシア兵は厳しい目で「ノーフォト」と言いながら取材車に近づいてきた。田中はカメラの2枚のメモリカードのうち1枚を抜いて隠した。=27日、ラチン付近 撮影:田中龍作=
国連PKFではなく、ロシア軍が平和維持軍として駐留するナゴルノカラバフに、田中は27日入った。
交通の要衝はどこに行ってもロシア軍だらけだ。平たく言えば辻々でロシア軍が検問しているのである。
2014年、プーチンのロシアがクリミア半島をウクライナから奪取した時以上に「ロシア兵密度」は高い。
ロシア軍はナゴルノカラバフの40㎞も手前のアルメニア領土に展開していた。兵営を築き国旗をコーカサス降ろしの風になびかせている。ここは一体どこの国の領土なのだろうか。
ただしロシアの和平仲介がなければ、アルメニアは壊滅的なまでの被害を受けていただろう。パシニャン首相は、プーチンに足を向けて寝られまい。

装甲車はロシア国旗を高々と掲げていた。 =27日、ラチン付近 撮影:田中龍作=
アルメニアの窮状を見透かし、次の一手まで考えて仲裁に乗り出したプーチンは巧みだ。ロシアがアルメニアを領有しなくても、支配下に置くことを十分過ぎるほど可能にしたのである。
ロシアがアルメニアを出城にすれば、ジョージアを北と南から封じ込めたに等しい。ジョージアの背後にいるのは米国だ。(地図参照)
ロシアと米国の野望が角逐する南コーカサスの奪い合いは、ロシアが有効打を放った。
クリミア半島奪取の際、割とおおらかだったロシア軍は、今回ピリピリしている。西側メディアには厳しい取材規制がかかるだろう。
大国の権益争いに翻弄される小国の悲劇を、幣ジャーナルはどこまで伝えることができるだろうか。

アルメニアが地政学的にこの地域の要石となっていることがわかる。
~終わり~