我が目を疑った。タクシードライバーに「ここはシュシ(シュシャ)か?」と幾度も問うた。地元ジャーナリストにも写真を見せて確かめるほどだった。
ナゴルノカラバフの聖地とも言えるシュシにトルコ国旗が掲げられているのである。(写真)
シュシは、日本人にとっての京都、アラブ人とユダヤ人にとってのエルサレムのような街である。エルサレム同様、アゼルバイジャンとアルメニアの双方が領有を主張してきた。
そもそも山岳地帯であるナゴルノカラバフの中で最も標高の高い街がシュシだ。
交通の要衝ラチンと主要都市ステパノケルトを間近に見下ろす。中東のゴラン高原と同様、戦略上きわめて重要だ。
イスラエルが決してゴラン高原を手離さないのと同じ国防上の理由が、アゼルバイジャンとアルメニアの双方にある。(イスラエルによる占領を よし としているのではない)
前回(92年)の戦争で、アルメニアがシュシを奪取した日にカラバフ軍が創設された。シュシがどれほど重要か象徴するような出来事である。
話を原点に戻そう。シュシにアゼルバイジャンかアルメニアの国旗が掲げられているのであればともかく、第3国のトルコ国旗が はためいて いるのだ。日本と韓国の双方が領有を主張する竹島に、突如として米国国旗が立ったのと同じだ。
アゼルバイジャンの後ろ盾であるトルコは、今回の戦争を けしかけた とも言われている。カラバフの聖地に はためく トルコ国旗はそれを裏付ける形となった。
NATOの一員であるトルコに戦略要衝を押さえられて、ロシアが黙っているはずがない。
シュシが今後、南コーカサスの発火点となるのは避けられそうにない。
~終わり~