ある野党議員が自らのYouTube番組でウクライナ情勢をめぐって「日本はネオナチ政権の後ろにいる」などと発言したことに対して、在日ウクライナ大使館が強い懸念を表明。
この議員が所属する党の幹事長は「ウクライナがネオナチ政権であるかのような誤解を与える」として議員を口頭注意した。
議員は「『ウクライナがネオナチだ』とロシアが言っている」と話したという。
そう。一方的にロシア側の言説をうのみにしているに過ぎないのだ。
ロシアとウクライナの歴史を少しでも調べればこのような受け売りは出てきようがない。
ロシアは第2次世界大戦でナチスドイツと戦い多大な犠牲を出した。「ナチス」を出せばロシア国民が収まる。
第2次世界大戦の際、ウクライナは戦場になった。ウクライナの女性たちは貨車でドイツに大量輸送された歴史がある。ドイツに連行された生き残りの女性から直接聞いた話だ。
ゼレンスキー大統領自身もユダヤ系である。近現代史を踏まえればウクライナがネオナチ政権を許容できるはずがない。中学生が考えても分かりそうなことだ。
この国会議員は「NATOの東方拡大がロシアとの戦争を招いた」とも語った。これもロシアのプロパガンダを信じ込んだだけ。
「NATOの東方拡大」はソ連崩壊直前のゴルバチョフとベーカー国務長官との会談(1989年12月)で出てきた話だ。
東西統一ドイツが避けられなくなり、「ドイツをNATO内に留めておくか、それともNATOに加盟させず自由にしておくか」をベーカーがゴルバに迫ったのである。
ドイツを自由にさせたらどうなるか。第2次世界大戦の惨禍を経験したヨーロッパやソ連が、認めるはずがない。
統一ドイツ内での話をロシアが「NATOの東方不拡大」と都合のいいようにネジ曲げたのである。
「ネオナチ」と「NATO」はプーチンの呪文といわれるプロパガンダの定番だ。
国会議員が定番のプロパガンダを信じ込み、それがあたかも真実であるかのようにYouTubeで拡散する。
フォロワー数は30万を超える。なにがしかの騒動が起きた際、「ロシアは日本を米軍から解放してくれるぞ」とX(ツイッター)で叫べば、日本を内乱に持ち込むことも可能だ。
米国から武器を買わされることもゴメンだが、ロシアのお先棒を担ぐのはもっとゴメン蒙りたい。
~終わり~
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