【日本原電・敦賀原発】 海外コンサル、わずか1日の現地調査で「活断層ではない」

日本原電が業務委託した海外コンサル。左がSCANDPOWERのエプステイン氏、右隣がベリマン博士。=21日、港区 写真:田中龍作=

日本原電が業務委託した海外コンサル。左がSCANDPOWERのエプステイン氏、右隣がベリマン博士。=21日、港区 写真:田中龍作=


 「敦賀原発(日本原電)の2号機直下に活断層が走っている」と調査団が報告した原子力規制委員会に対して日本原電が巻き返しに出た。海外のコンサル会社に依頼し「活断層ではない」とする評価書をまとめ、原子力規制委員会に提出する予定だ。

 同社はきょう午後、都内で記者会見を開いた。木村仁取締役は「国内の専門家だけでなく海外の専門家によるレビュー(評価)を頂戴して信頼性の高い評価報告書としたい」と期待を込めた。原子力規制委員会が国内の専門家で固められていることへの当てつけでもある。

 そのうえで「(2号機の真下にあるのは)活断層ではないという我々の知見は認めてもらえなかった」と悔しさを露わにした。原子力規制委員会の専門家委員個人あてに抗議文を送りつけた会社だけのことはある。

 日本原電が業務委託したのは、リスクマネジメント会社の「SCANDPOWER」(本社ノルウェー)と英国シェフィールド大学のNeil Chapman教授をリーダーとする地質関係の専門家グループ。

 ケルビン・ベリマン博士(ニュージーランドGNSサイエンス)は「活断層と断定する根拠はなかった」と強調する。よほど詳しく調査したのかと思っていたら、そうではなかった。

 筆者が「現場を見たのか?」と質問したところ「見た」と答えるので、「何日間滞在したのか?」と聞くと博士は「1日」。

 地震大国日本にあって活断層は原発再稼働を左右する極めて重要な要素だ。その現地調査がわずか1日というのだ。

 博士が判断材料としているのは、日本原電が雇っている現地調査員からの説明だった。

 筆者は呆れてものが言えなかった。再稼働させたい一心の日本原電の調査員が、活断層につながるような答をするわけがない。

敷地内を走る浦底断層(太線)と破砕帯(斜線)。=写真:田中龍作=

敷地内を走る浦底断層(太線)と破砕帯(斜線)。=写真:田中龍作=

 ベリマン博士が敦賀原発に関する事情をよく知らないことが、もろばれになる場面があった。活断層についての取材歴が長い明石昇二郎記者(フリーランス)が次のような質問した時だ―

 「日本原電は私の取材に対して“浦底断層(※)は活断層ではない”と説明してきた。(ところが)国のバックフィットを経て“浦底が活断層である”と認めるようになった。日本原電は30年間、地元住民に対して“浦底は活断層ではない、死んだ断層だ”と言ってきた。それは御存知か?」

 博士は「(2号機の真下を通る断層が)明らかに活断層ではないことが示されている」と答えた。明石記者が質問しているのは浦底断層についてなのである。博士は当事者の日本原電が「浦底は活断層」と認めていることを知らないようであった。

 明石記者「日本の安全基準では、活断層を否定できない場合安全側に判断する(稼働させない)という項目がある。それは御存知か?」
 
 博士「予防原則も確かに必要です。・・・(中略)原子炉近傍の断層であっても安全であることは世界中で証明されている」。

 博士はクライアントの日本原電とも すりあわせができていないことが明らかだった。根拠らしきものは明確に示さず「安全だ」を繰り返した。

 筆者がベリマン博士を追及していると、隣に座ったSCANDPOWERのエプステイン氏が司会者に「巻き」を入れた。さすがリスクマネージャーと言ってしまえばそれまでだが、都合の悪いことは隠そうという姿勢がありありだ。「卑怯な記者会見だ」と筆者はマイクを握ったまま指摘した。

 記者会見を通じて見えたものは、何としてでも原発を再稼働させたい、日本原電のなりふり構わぬ姿だった。

 ◇
(※)浦底断層
敦賀原発敷地内を南北に走る構造線(写真・太いタテ線)。2号機真下を通る破砕帯(細い斜線)と交わる。破砕帯についても原子力規制委員会・調査団は活断層との見解をまとめた。

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