以前(1月22日掲載)にも『拙ジャーナル』で紹介したが、原発事故で身も心もズタズタにされた福島の子供たち57人の思いを絵と文章で綴った『福島の子どもたちからの手紙』(朝日新聞出版)がきょう書店に並んだ。サブタイトルは『ほうしゃのうっていつなくなるの?』。
原稿(絵・文章)は、被曝を避けるために福島市から山形県米沢市に自主避難した主婦の西片加奈子さんが昨年6月から、半年がかりで集めた。西片さん自身2人(小5、小3)の子を持つ母親だ。
出版のきっかけは、昨年8月に持たれた福島の子供たちと霞ヶ関官僚との対話集会だった。会場に展示された子どもたちの絵や文章が編集者の目にとまったのだ。
本を開くとクレヨンや色えんぴつで描いた子供たちの絵が目に飛び込んでくる。同じページには文章も添えられている。絵日記のような形式だが、子供特有の弾けるような明るさは、かけらも見られない。原発事故を恨み、自分たちの将来を案ずる作品ばかりだ。
「ぼくは福島でほうしゃのうがあって、それから引っこしの話になって、お父さんと友だちとはなれて悲しいです」。しゅんや君(小3)の作品は友達とドッジボールを楽しんでいた頃の絵も描かれている。
「おしえて下さい 僕達はどうなりますか?いくつまで生きられますか?福島県に住めますか?」。由也君(中学生)は遺骨と墓場を描いた。読む者に怨念さえ覚えさせる。
子どもたちに、こうした暗い絵と文章を書かせる国にどんな将来があるのだろうか。胸をしめつけられる一冊だ。
西片さんに寄せられた全67作品のうち10点がボツにされた。一家が避難して連絡がつかないためだった。