原子力規制委員会が優先して審査を進め、再稼働第1号と見られている九電・川内原発。最終段階となる地元合意は鹿児島県議会、薩摩川内市議会とも自民党が圧倒的多数を占めていることからすんなり行きそうだ。
鹿児島県は6月県議会で賛成陳情を採択し、伊藤祐一郎知事が7月初旬にも再稼働へのGOサインを出すものと見られる。
だが肝心要の巨大噴火については、規制委員会に火山の専門家がいないことなどから、九電の主張通り「予知可能」「対応可能」で押し切られる公算が大きい。
環境団体、住民団体(※脚注)がきょう、国会内で対政府交渉を持ち、川内原発の安全性を追及した。政府側は原子力規制庁、経産省資源エネルギー庁から7人が出席した―
市民:「島崎委員は『(火山活動の)モニタリングをして何か異常を感知した時にどう判断するのか、判断基準をあらかじめ決めておくことが重要』と発言した。九州電力が示した基準をそのまま受け入れることはできないという中で。モニタリングの判断基準がないと、破局的噴火が起こりうるタイミングで判断ができないわけじゃないですか?当然それがないと審査が通らないと思うんですが?」
政府:「これ(火山活動のモニタリング)については適合性審査に直接的に結びつくものではありません。別物です」。
市民:「モニタリングが不可能だったら、設置許可はできないんじゃないですか?」
政府:「設置許可とは別の話です」。
適合性審査とはかくもいい加減なものなのか。筆者は開いた口が塞がらなかった。姶良カルデラが噴火すれば原発が火砕流に飲み込まれる可能性があることを火山学者は指摘している。そうなれば事故の規模は福島の数百倍に上る。モニタリングによる判断基準なしで、どうして安全に運転できようか。
政府の答弁に耳を傾けていた男性が、やおら立ち上がってマイクを握った―
「私、鹿児島から来たんですが、この論議聞いてると噴火なんてそんな近いうちに起こらないよ、という前提でしゃべっているように聞こえるんです。そんな甘っちょろいものじゃないって事を分かって欲しいです。僕ら桜島のふもとに住んでますが、そもそも設置許可の件で求めるものじゃないと言ってる。なぜそんなことが言えるんですか?何も対処方針を出す基準が無くてね、つまり火山に対して何も対策が無いって事です」。
火山帯だらけの日本で原子力規制委員会になぜ火山の専門家がいないのか? 不思議だ。いると不都合なのだろうか。
住民・環境団体から「有識者(火山の専門家)を交えた検討会議を開かないのか?」と問われると規制庁の官僚は「その質問はアレなんで・・・」と逃げた。
責任感も何もあったものではない。適合審査もいい加減、担当する役人もいい加減。「原発事故はまた起きる」と確信した、きょうの対政府交渉だった。
◇
(※主催団体)
反原発・かごしまネット / グリーン・アクション / 美浜の会 / FoE / 福島老朽原発を考える会 / 原子力規制を監視する市民の会