
ヒズボッラーの最高指導者だったナスラッラー師はダヒアの地下深く潜んでいたが、イスラエル軍にバンカーバスターを撃ち込まれ息絶えた。=29日、ダヒア 撮影:田中龍作=
司令部や武器弾薬庫が置かれヒズボッラーの最重要拠点となっているベイルート郊外のダヒア。取材に入るのが超絶難しくなっている。
前回(昨年10~11月)は戦争中だったが、部族最高位のファミリーに案内してもらい、ダヒア内部を撮影できた。
ところが今回はそのファミリーまでが渋る。戦争でイスラエルに殺害されたヒズボッラー戦闘員は1万5千人とも言われている。
顔がガラリと入れ替わったため取材交渉ができなくなった。田中側はワイロを申し込んだが拒否された。カネを受け取らなかったのだ。

イスラエル軍の爆撃で破壊されたビル。=29日、ダヒア 撮影:田中龍作=
停戦後もイスラエルに爆撃されていることもあり、「ニュー・ヒズボッラー」は神経質になっているようだ。
田中は取材車の車内から流し撮りをしながらダヒアに迫った。住民はヒズボッラーの戦闘員でなくてもシンパである。
手練れのドライバーの指示に従いながら車内から撮影を続けた。「今だ。ここを撮れ」「カメラを降ろせ」…バイクが取材車のそばを走っている時などは要注意だ。
先月この方法で撮影していたトルコのジャーナリストがヒズボッラーに拘束されている。田中は生ツバを飲み込みながら流し撮りを続けた。

ダヒアにはパレスチナ難民キャンプもある。イスラエルにとっては癪のタネだ。=29日、ダヒア 撮影:田中龍作=
ジャーナリストを入れても入れなくても、イスラエルにはすべて筒抜けだ。ドローンによる空からの偵察と下からの内通情報だ。
イスラエル軍の情報の確かさには舌を巻く。一例を挙げよう。
同一の施設に3度4度とミサイルを落とす。初めのうちは何もない。だが4度目になって大爆発を起こす。地中深くにヒズボッラーの弾薬庫があったのだ。
よそ者を近づけない、というのもリスク管理かもしれない。
だがジャーナリストを入れてパレスチナのようにイスラエルの非道を世界に知らしめた方が得策だと思うのだが。
~終わり~
【読者の皆様】
田中龍作ジャーナルは読者のお力により維持されています。今回も借金に借金を重ねての取材となりました。