
ヒズボラが鹵獲したイスラエル軍のジープとイスラエル兵。ベイルートから南へ107㎞。=25日、ベルトジュバイル村 撮影:田中龍作=
昨秋、ヒズボラとイスラエル軍との間で2ヵ月近くにわたって続いたレバノン戦争が停戦してから約半年になる。停戦とは名ばかりで、イスラエルの執拗な攻撃は連日つづく。
アサド政権が倒れたことで、シリアにいたヒズボラが皆、レバノンに帰還してきたからだ。イスラエルを脅かす天敵が増えたのである。
11月27日の停戦発効からこれまでに150人とも200人とも言われるヒズボラの戦闘員が、イスラエル軍のドローンで殺害されている。1日1人がヒットされていることになる。
「ウォーン」。上空を旋回するドローンの飛行音がうるさい。きょうも獲物を探しているのだ。
UNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)がヘリコプターを飛ばしてイスラエル軍を牽制しているが、お構いなしだ。シリアからのリポートでも述べたが国連軍は無力なのである。

男性は「息子は自らの命と引き換えにイスラエル軍を掃討した」と話す。ロケット弾(写真奥)はイスラエルの方角を向いていた。=25日、ベルトジュバイル村 撮影:田中龍作=
田中はヒズボラが人口の約70%(支持者も含めて)を占めるレバノン南部へ取材車を走らせた。南へ行けば行くほど、言い方を換えればイスラエル国境に近づけば近づくほど、イスラエル軍による爆撃の跡が凄まじい。
家屋という家屋は悉く破壊されていた。残った家屋を探すのが難しいくらいだ。
イスラエル軍は家を見れば即ヒズボラのアジトと決め込んだのだろうか。

爆風で乗用車は2階まで飛んだ。一帯は一軒残らず破壊されていた。ベイルートから南へ116㎞。=25日、テブニュ村 撮影:田中龍作=
きょう5月25日(現地時間)は、「抵抗と解放の日」と呼ばれる記念日だ。25年前(2000年)のきょう、ヒズボラはレバノン南部に駐留していたイスラエル軍を追い出したのである。
あれから25年。数次にわたる戦争の度イスラエル軍はレバノンに陸上侵攻してきた。
今回、イスラエル軍は停戦発効後もこれまでの国境から1㎞ほどシリアに侵入し基地を作ってしまった。
アサド政権なき今、レバノン南部はまたまた主戦場となるのだろうか。

風に翻るダビデの星。イスラエル軍はこれまでの国境から1㎞も侵入していた。ベイルートから南へ93㎞。=25日、ファルキル村 撮影:田中龍作=
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