脱原発運動や市民運動が股裂きに遭った東京都知事選挙。きのうまで共に運動していた仲間が二つの陣営に分かれ、ネット上で非難、罵倒しあった。
「これほど辛いことはなかった」。それぞれの陣営で選挙ボランティアに汗を流した彼ら彼女らは口々に語る。
「これではいけない、仲直りしよう」。有志たちがきょう、都心で『脱原発出直しDEMO』を行った。(呼びかけ:世界猫々会議)
幼な子2人を連れた母親(30代)は、先々週までA陣営でチラシ配りなどに励んでいた―
「ああいうことで分裂したので、きょうをきっかけにまた一つになればいい。都知事選挙で脱原発票は増えたのだから、一つになってまた安倍政権にぶつかればいい」。母親は明るい表情で話した。
作家の雨宮処凛さんは「出直しデモがあると聞いて希望が持てた」と素直に喜ぶ。「ネット上で罵り合った後だけに顔を合わせることが大事。放置したままだと問題になっていた。会う(再会の)場所を作ってくれて有難う」。雨宮さんは呼びかけ人に感謝の意を表した。
選挙期間中、彼ら彼女らを隔てていたオレンジとグリーンのマフラーは、今日はなかった。
どちらの陣営にも くみ しなかった人達も参加した。その一人、山本太郎議員の姿もあった。山本議員は最後まで中立を貫きながら、ひたすら「選挙に行こう」と街頭で呼びかけた。
前回の都知事選挙で脱原発を明確に打ち出していた有力候補は宇都宮健児さん一人で、獲得したのは96万票だった。今回は細川護熙さんも加わり、二人合わせて200万票近く獲得した。
細川さんの立候補で保守・中道の支持者が脱原発に合流したことの意味は大きい。宇都宮さんも前回より得票を伸ばした。
311以降、数えきれないほど脱原発デモを見てきたが、街頭の反応がこれまでと違った。道行く人の中には身を乗り出すようにしてデモ行進を見つめる人もいた。歓迎しているのだろうか、嬉しそうな表情だった。
分裂ではなかった。ウイングを広げた分、脱原発勢力は大きくなったのだ。