神奈川県の黒岩祐治知事が昨年末、放射性物質を含んだ被災地がれきの受け入れを突如受け入れると表明した問題で、神奈川県内の市民環境団体「hamaosen対策協議会」が6日、横浜市と神奈川県に「がれきを受け入れないよう」要望した。横浜市にも要望したのは、県は焼却場を持っていないためだ。
同協議会と神奈川県内の住民約80人は横浜市役所を訪れ、対応した資源循環局適正処理部施設課の足立原課長に問い質した――
「県から横浜市に連絡はあったのか?」
「トップ(市長)の話は私にはわからない」
「受け入れるのか?」
「組織の中で検討したうえで(住民への)必要な説明を行い(中略)…先ずは検討から始まって(後略)…」
足立原課長は結局、責任ある回答を避けた。唯一つはっきりしているのは「受け入れない」と言わなかったことだ。
横浜市では昨年10月、マンションの屋上から原発事故由来と見られる高濃度のストロンチウムが検出された。汚泥にも高濃度の放射性物質が混じっていることが明らかになっている。がれきに含まれている放射性物質はゴミ焼却場で燃やしても、放射能はそのままなのである。子を持つ親は気が気でない。
神奈川県庁の対応はさらにお役所的だった。環境保全部廃棄物指導課の太田仁志課長らは、要望に訪れた一行約80人を薄暗い廊下に立たせたまま応対した。
男性住民:「“がれきを受け入れてほしくない”という県民の思いを知事に伝えてほしい」
太田課長:「私の立場からそれは言えない」
女性住民:「(横須賀市でがれきを焼却する計画について)地元町内会の同意だけで進めるのは、原発建設と同じ」
太田課長「……」
太田課長らは住民の危機感など「どこ吹く風」と言った具合だった。
暖簾に腕押しのようなやりとりがしばらく続いた。一行とのやりとりが20分余り続いたところで、太田課長は幕を引こうとした―
「いろいろ御意見があるのは理解します。きょうは御意見を伺ったということで…」
すると、子供を抱いた女性(横浜市在住)が廊下中に響き渡る声で叫んだ。女性は1歳と3歳の子供がいる。「がれきを受け入れたら私たちの家族は神奈川県から出て行きますからね」。
太田課長は「はい、はい、はい」とまるで他人事のように答えるのだった。住民が脱出を決意するまで追い詰められていることをどう考えているのだろうか?痛くも痒くもないといった調子だった。
その後、hamaosen対策協議会は、県庁内にある記者クラブで記者会見を開いた。記者クラブの質問は、いずれも行政側に立った質問だった―
J社の女性記者は「放射能とガレキは切り離すことができないもの。(それを問題視していたら)話が前に進まないのでは…?」と質問した。スタンスは『受け入れありき』なのである。
記者クラブからのお咎めを覚悟で筆者は質問した―
「横浜市、神奈川県とも住民の危機感を何とも思っていないようだが…?」
「放射能の問題はずっとそうだった。何かあって人が騒いでも無視して、(行政は)『後から出てきました。はい、食べさせちゃいました』だ。一体食べさせた人の責任はどうなるんですか?(危険性が)分からなければ、先ず止めればいい。検証して数字を出して議論して、問題がなければ受け入れればいい」。対策協議会の本橋一美共同代表は喝破した。