東電の非情な仕打ちに一人の主婦が決起した。ハンドルネーム、ハルオさん(38歳・埼玉県南部在住)だ。2人の子供を連れて国家をも支配下に置く東京電力の本店前(内幸町)で敢然と抗議の声を挙げた。
ハルオさんが立ち上がったのは2つの理由からだ。
昨年末(12月28日)、福島の母親たちがアポを取って申し入れに来たにもかかわらず、東電は門前で対応した。彼女らは1時間30分も寒空の下に立たされたのだった。ハルオさんはこの日、東電前の車道を挟んだ場所から福島の女性たちを応援していた。
「東電の非情な対応に怒りが収まらず、改めて抗議の声を挙げにきた」。ハルオさんは憤懣やるかたない様子だった。「福島の女性たちは帰り道、どんな気持ちだったろうかと考えると、いたたまれない」とも話した。これがまずひとつ。
次は―
東電・勝俣会長邸そばの公園でハンストを敢行した山口祐二郎さんの影響だ。「暴力に行きたいところだけどグッと抑えている。山口青年のように自己犠牲に押さえ込まれたのがつらい。じっとしてたらコイツ(東電)らの思う壺。怒りのエネルギーは彼と同じ…」。
ハルオさんは吐き出すように話した後、「勝俣邸前で命を懸けた山口青年が羨ましい」とポツリ。
「命懸けでやって原発が止まるんだったら、ハンストだってやる」。ハルオさんのツイッター仲間も山口さんに強い影響を受けて、こう呟いた。
「単独でも東電に抗議する」。ハルオさんの呟きに横浜市の主婦が呼応した。
二人の娘(6歳、8歳)を連れたハルオさんと横浜の主婦(30代)は4日、東電前でシュプレヒコールをあげた。「原発よりも命が大事」「子供の未来に東電いらない」…。真冬の冷たい風が容赦なく吹き付けるなか、手製の紙メガホンを通したハルオさんの声が響いた。
東電正門前で警備にあたる制服警察官が職務質問にやってきた。警察官は「所属団体は?」「いつまでやるのか?」などと一通り尋ねた後、「寒い中頑張って下さい」と告げて去って行った。
「東電の窓ガラスひとつ割れていないのが不思議。他の国だったら暴動が起きているだろう」。ハルオさんは巨大な東電ビルを忌々しそうに見やりながら、一人ごちた。