
男性は入念に品定めをしていた。=14日、ダマスカス 撮影:田中龍作=
田中は14年間にわたって続いた米国の経済制裁が一昨日、解除されたばかりのシリアに入った。
「国民の10人に9人が貧困。人口の70%が人道支援を必要としている」(国連広報センター・2023年)。凄まじいまでに貧しい国である。
シリアは反体制勢力により追放されたバッシャール・アサド大統領の先代ハーフェズ・アサドの時代から貧しかったが、経済制裁によりいっそう貧しくなった。
首都ダマスカスの街を歩けば、物乞いが近づいて来た。信号待ちで停車した車には、頼みもしないのに子供が寄ってきてフロントガラスを拭いた。

肉店を訪れる客は少なかった。=14日、ダマスカス 撮影:田中龍作=
クレジットカードはすべての商店で通用しない。外国人が多く泊まるホテルとて例外ではない。
食料品店が裕に100軒を超すスークに足を運んだ。不景気で物価高の日本でも混雑する夕方なのに活気がない。買い物客の足どりが重いのだ。
経済制裁前と比べたら商店の売り上げはどれ位減ったのだろうか。
豆類販売店の経営者は「70%売り上げが落ちた」と力なく話した。
果物店の店主は「50%落ちた」。
チーズ店の店員は「50%減った」。

シャッターを降ろしたままの商店が目立つ。=14日、ダマスカス 撮影:田中龍作=
どの店も経済制裁の解除は歓迎するとしながら、「売り上げが戻るまでは時間がかかる」と半ば諦め顔だった。
香辛料を扱う店で「アサド政権は復活すると思うか?」と尋ねた。店主も店員も即座に「ノー」と答えた。店主は自分の首を絞めてみせた。
ダマスカス近郊では少なく見積もっても10万人の遺体が埋葬されている集団墓地が見つかったりする。
恐怖政治と内戦と制裁から経済が立ち直るにはまだまだ時間がかかりそうだ。
~終わり~
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田中龍作ジャーナルは読者の御力により維持されています。今回も借金に借金を重ねての取材となりました。