在日外国人が職場にいた。「きょうは外登(外国人登録証)の更新に行かなくちゃならないからね」と言って早退していたのを思い出す。
「外登」は外出の際、絶えず携帯しなければならない。普通に暮らしている限り公的な身分証明書など必要のない日本にあっては、なじみの薄い代物である。
後に外登はICチップの埋め込まれた「在留カード」となった。チップには重要な個人情報が記録されている。「在留期限」「就労可、不可」「日本の住所」などだ。(日本政府にとっての)不法滞在が一瞬にして分かる。
出入国在留管理庁は在留カードの偽造が後を絶たないことから、偽造を見抜くアプリを開発し、無料で誰にでもダウンロードさせるようにした。昨年末からである。
同管理庁によるとダウンロードはこれまでに4万件を数える。(Appleのみ)
誰でもダウンロードできることから、誰でも「入管」当局者になれる。民間人が民間人のプライバシーをのぞき見れるようになったことから人権侵害が起きるようになった。ツイッター上などに悲鳴があがる。某氏のツイートをここに紹介する―
『偽造も改ざんもしてない。それでも、あなたの在留カードが本物かこのアプリで確かめられるよ、と言われたら私なら苦痛だ。
ましてや、おまえの偽物じゃないだろうなと威圧されたなら確実に傷つきます。そのような行動を一般市民に託すアプリです。#入管は在留カード読み取りアプリを回収してください』。
きょう(15日)は超党派で作る「難民問題に関する議員懇談会」が、出入国在留管理庁の当局者を呼んで事情を聴いた。
人権侵害の実情が各地からZoomで報告された。
著名新聞記者が「アプリを取り下げる予定はないのか?」「(アプリをダウンロードできる)事業者を限定すべきではないのか?」と質問した。
同管理庁の答弁は「取り下げの予定はない」「事業者の限定配布を行う予定はない」だった。
在日米国人のルイス・カーレットさん(滞在歴26年)の訴えは悲痛だった。「ICチップ(在留カード)とアプリが不信感を生み、日本人と外国人の溝が大きくなる」。
入国審査官や警察官などが提示を求めるのならともかく、民間人が民間人の個人情報をチェックするのである。
そら恐ろしい監視社会が訪れた。外国人だけと思っていたら、次は日本人も見張られることになる。
~終わり~
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