政府は自治体の負担を軽減するために21日から、企業や職域においてワクチン接種が行えるようにする。加藤官房長官が1日、記者会見で明らかにした。
記者団が「接種の対象となる者は誰の判断で決めるのか? 社員は想定できるが、非正規、アルバイト、取引先など対象は広くなるが、誰が決めるのか?」と聞いた。
記者クラブにしては至極まともな質問だった。
加藤官房長官は「実施主体においてご判断頂ければと思う」と答えた。企業の判断に任せるということだ。
田中は派遣切り(2008年)が起きる前から非正規労働の取材を続けているが、企業にとって非正規労働者は「使い捨てカイロ」のような存在である。
企業がわざわざ派遣労働者やアルバイトのためにワクチン接種をするとは考えられない。(ごく一部の企業では非正規にも接種するようだが)
3日の対政府ヒアリングで野党議員が厚労省を追及した。「正社員と同様に非正規雇用やアルバイトの方々も同時に接種すべき、と政府が指導すべきではないか」と。
厚労省は次のように答弁した―
「企業等に実施の義務があるものではなく、対象者は当該企業において適切に判断して頂くことになる」「具体的にこの範囲(非正規、アルバイトも含む)でなければならない、という義務はない」と。
そうだろうか? 同じ職場で非正規労働者やアルバイトがワクチンを打てない。これは「短時間・有期雇用労働法第8条、第9条」が定める「雇用形態に関わらない公正な待遇」に違反する疑いさえある。
山井和則議員(立憲)の質問は、非正規労働者の実態に即したものだった。
「正社員がワクチンを接種できて、同じフロアで仕事をしている非正規社員やアルバイトが接種できない。差別だ」「命に係わるワクチンで差をつけてよいのか」
厚労省が強い指導をしない限り、企業が非正規労働者やアルバイトのためにワクチンを打つことはないだろう。
「正規か非正規か」で、命の軽重が線引きされる。残念ながらこの国は弱者に冷酷になってしまった。
~終わり~
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