大手飲食業界を支えるシフト制の非正規労働者。緊急事態宣言下、お上の要請による時短営業のため、勤務が激減した。
企業は正規労働者には休業手当を支給するが、シフト制の非正規労働者は対象外だ。生活が成り立たなくなるまでに収入が減った。
これでは生きてゆけない。去る21日、大手飲食チェーン店で働く非正規労働者のユニオンが厚労省と交渉を持った。
とんかつ、かつ丼大手チェーン店に勤めるシフト制の非正規労働者(男性40代)は、コロナ前の手取り収入は月25万円あった。
だが前回の緊急事態宣言が出た去年4月ごろからシフトカットが始まり、収入は半分以下になった。シフトカットはもちろん今も続く。
男性は「企業名を公表するなどの罰則を課してほしい」と訴えた。
厚労省は「シフト労働者であっても勤務実績に基づいて労働日数が設定されていれば、雇用調整助成金(休業手当)の対象となる」と答えた。
ところが大手企業はそんなに甘くない。ごくたまに大体の勤務日数が設定されていても「勤務日数は変動がある」と契約書に一筆添えられているのだ。
会社の責任で休業させた場合の補償を定めた労基法26条に該当しない。
シフト制労働は雇用の調整弁なのだ。それも究極の調整弁である。
最初から勤務を入れないのだから「仕事から外した」などと責められなくても済む。「派遣切り」でもない。企業が手放すはずがないのだ。
もう一つ。大手企業がシフト労働者の権利をここで認めてしまえば、コロナ後も同様に対応しなければならなくなる。
財務省にも“事情“がある。雇用調整助成金を活用する休業手当を、財務省は使わせたくない。雇用調整助成金の財源は雇用保険だ。その雇用保険がパンク寸前なのだ。
ならば、中小企業の労働者を対象にした「休業支援金制度」を大企業にも適用すべきだ・・・・と野党は主張しているが、政府の反応はすこぶる鈍い。昨年9月から言い続けているのだが、進展は見られない。
大手外食産業を支えてきたシフト制労働者は、見捨てられたままとなるのか。
~終わり~
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