生活困窮相談 「これから訪れるのはリーマンショックの比じゃない」

かつては段ボール箱とブルーシートが並んだ新宿中央公園。行政は野宿者を締め出すことに力を入れてきたが、今後の経済動向しだいでは大量発生する恐れもある。=15日、撮影:田中龍作=

 「コロナになって死にたいよ」。

 つい数年前まではホームレスのメッカだった新宿中央公園。カートを引きトボトボと歩く男性(72歳)は涙ながらに言った。

 建設現場の仕事がなくなり2年前に路上に弾き出された。新宿西口地下で夜露をしのぐ毎日だ。

 万引きで “生計” を立てている。「刑務所に入った方が3度のメシにありつけ、シャワーも浴びられる」。

 「夕べ(14日夜)はあんまり冷えるので100円でマックに入ってコーヒーを飲んで過ごした」。

 男性の靴は底が今にもはがれ落ちそうだ。「(ボランティアからの支給物資のなかに)靴がなかったら、かっぱらう(万引きする)か。それで捕まった方がいいかな」。

 もともと厳しかった男性の生活がさらに苦しくなったのは、去年10月の消費増税以後だ。なけなしの現金が目減りするからである。

ベテラン相談員「一ヶ月分の蓄えがない人が(相談電話を)掛けてきているので、(本来給料日であるはずの)25日をまたぐと大変なことになる。=15日、都内 撮影:田中龍作=

 法律家や労働問題の専門家たちが、きょう、「緊急生活保護ホットライン」を開設した。

 午前10時の開始と同時に4回線ある電話はひっきりなしに鳴った。

 ■埼玉県在住の男性(76歳)はフリーランスの芸人だ。

 年金は月3万円。不足分は仕事で稼いでいたが、コロナで仕事が全部キャンセルされた。

 ■80歳の女性(板橋区)は息子に生活を支えてもらっていたが、息子の収入が減ったため、生活費が入らなくなった。

 公共料金(ガス、電気、水道代)が払えなくなった。

 ■内装会社の経営者は発注がなくなったため資金繰りが厳しくなった。

 3月は従業員を休ませる。2月分の給料は払った。これから(雇用を)どうしようか?

野宿者は炊き出しを求めてひたすら歩く。靴は底がはがれ落ちそうになっていた。=15日、新宿中央公園 撮影:田中龍作=

 相談にあたる法律家たちは、長年にわたって生活困窮者からの相談を受けてきた。

 「リーマンショック(2008年)の時は、派遣切りに遭うなどした非正規労働者が犠牲になった。今回は経営者やフリーランスなども巻き込まれている。層が広い」

 「生活保護は審査があり、支給が決まっても、本人に払い込まれるまでラグ(遅滞)がある。物凄い政策を打ち出さないと」

 「大不況なのか?それを超えるのか?リーマンショックの比じゃない。これから訪れるのは」

 人が路上に弾き出されるまでの流れは実にシンプルだ。仕事がなくなる→家賃が払えなくなる→ネカフェ暮らしとなる→ネカフェ料金も払えなくなる→路上。

 パンデミックが引き金となった世界同時不況が、消費増税で弱った庶民を襲ってこようとしている。

 政府が思い切った手を打たなければ、大量のホームレスが発生する恐れがある。

      ~終わり~

     ◇
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