「とにかく一度広域処理をストップして、十分検証してもらいたい」。21日、震災瓦礫の受け入れ地域と瓦礫を送る側の市民が環境省に集まった。北は福島から南は北九州までの住民で作る「ストップ!汚染がれき全国行動実行委員会」だ。
面々は長浜博行環境大臣宛ての要望書を提出し記者会見を開いた。だが問題の重要度に比べ、マスコミの注目度はあまりにも低い。メディアはフリーランスの筆者を含め数えるほどしかいなかった。記者席はガラガラだ。
環境省が、博報堂、電通に約40億円で委託して行ったテレビコマーシャルや新聞広告の大キャンペーンが効いているのだろう。復興利権にあずかったマスコミは、瓦礫処理の負の側面には口をつぐみ続けている。
「最初積上った瓦礫を見たときは、広域処理は必要かなと思った。しかし、内容をよく見ると疑問が湧いた。一方的に、広域処理が決まったから進めるのではなく、地元で(命の防波堤などに)活かすようにするのがいいと思う」。岩手県出身で震災後は頻繁に地元へ帰っているという亀田良子さん(現在、埼玉県に住む)は語った。
環境省に対する厳しい意見も出た――
「広域瓦礫処理は、被災地支援になっていない。復興のために使われるべき予算が、大手ゼネコンに渡り、莫大な輸送費をかけて遠い場所へ運ばれる。そのお金を避難者支援や、子どもの避難キャンプなど本当に必要としているところへ使う方法を取ってもらいたい」。災害廃棄物の試験搬入を終了した石川県から来た橘薫さんは、憤りを隠さなかった。
「瓦礫が復興の妨げになっている」「みんなで痛みを分かち合おう」…環境省は「絆」を強調したメッセージを発信し、広域処理に反対する市民は「非国民」であるかのような雰囲気を作ってきた。
ところが実際の瓦礫総量は、当初見積もった量の3分の1となり、新しい焼却炉建設により被災地での処理能力も上がった。大手ゼネコンを瓦礫利権として潤わせる必要はなかったのだ。
細野前環境大臣が目を潤ませ「被災地に想いを寄せて、広域瓦礫処理をしなければいけないんです」と訴えていた光景が思い出される。
一方で、北九州市では福島から避難してきた母親が瓦礫となって追いかけてくる放射能に怯えていた。政府が押し付ける「絆」の背景には黒い利権が潜んでおり、それが無辜の市民を押しつぶそうとしている。
「瓦礫問題は利権問題。放射能拡散に対して十分な検証が行われず、焼却を無理矢理進めてしまう。命よりも利権を優先しているということだ」。大阪からきた山田敏正さんは、今月24日から始まるという試験焼却に危機感を募らせた。
それもそのはず、先日焼却炉のバグフィルタを通り抜けた焼却灰が写真付きで報道されたのだ。環境省は「放射性物質はバクフィルタで99.9%捕捉できる」と説明していたが、放射性物質を含んだ焼却灰が出たのである。
「瓦礫問題は、広告、マスコミを通じて間違った宣伝をされてしまった。本当の問題が理解されていない。これは今だけの問題ではなく、次の世代、地球の問題。まず出来る事は、まず広域処理を止めることだと思う。もっとメディアにも注目してもらいたい」。世話人の川田龍平参院議員は切実に訴えた。
100ベクレル以上の物は放射性廃棄物として厳重に管理すると法律で決まっている。8000ベクレル未満と言われる焼却灰は本当に埋めてしまっていいのか。放射性物質が付着したものは「拡散させない」「動かさない」という国際ルールにもう一度立ち返って考える必要があるのではないだろうか。